すべての花へそして君へ②


「行かないでよ……。あおい。ずっとずっと。そばにいてくれるって、言ったじゃんっ……」


 眠る彼女にそっと口付け、香る髪に顔を埋めながら、瞳を閉じた。


 この運命は。この道は。
 自分がしてきた“付け”なのかと。

 そう、呪いながら――――……。


 ――――――…………
 ――――……


 今日の夜空は、そんなことがあったあの時の……熱海で見た空と、とてもよく似ていた。
 曇り一つない、澄んだ空。まるで、オレの心を映し出したかのような。


『ひと通り終わったら来て』

『……っ、どこに』

『――待ってる。もう、逃げないから』


 この部屋で彼女を待つのは、さて何度目だろう。数えたくはないかな、あまり。
 この部屋にはいい思い出はないだろう。オレにではなく、彼女にとって。


「……今思えば、泣かせてばかりだったな」


 また、泣かせてしまうだろうか。
 それとももう、オレの前では泣いてくれないだろうか。


「オレはもう、泣かないよ。……泣かない」


 泣いたのは……あのときが最後だから。


 ――――――…………
 ――――……


 火照り続ける全身。ひとまず浴びたシャワーも、掻いた汗を流せただけでそれは静まらず。


「――――……ぷはっ」


 かなりの時間、洗面所で顔を冷ましてようやく、その熱も落ち着きはじめる。


「はあー……」


 今でも、感触が残っている。
 いつまでも触れていたい柔肌。あまい、唇。

 ……今でも目に、焼き付いている。
 体中桃色に染めて。快楽に涙を浮かべて。触れる度に体を捩って、その心地よさに出てしまいそうになる声を、必死に我慢している可愛い顔。

 今でも、耳に残っている。
 快楽に溺れながら、それでも一生懸命オレの名前を呼んで、そして好きだなんて言ってくれた、愛おしくてしょうがない声。


『は、恥ずかしくて……死んじゃいそう……』