「行かないでよ……。あおい。ずっとずっと。そばにいてくれるって、言ったじゃんっ……」
眠る彼女にそっと口付け、香る髪に顔を埋めながら、瞳を閉じた。
この運命は。この道は。
自分がしてきた“付け”なのかと。
そう、呪いながら――――……。
――――――…………
――――……
今日の夜空は、そんなことがあったあの時の……熱海で見た空と、とてもよく似ていた。
曇り一つない、澄んだ空。まるで、オレの心を映し出したかのような。
『ひと通り終わったら来て』
『……っ、どこに』
『――待ってる。もう、逃げないから』
この部屋で彼女を待つのは、さて何度目だろう。数えたくはないかな、あまり。
この部屋にはいい思い出はないだろう。オレにではなく、彼女にとって。
「……今思えば、泣かせてばかりだったな」
また、泣かせてしまうだろうか。
それとももう、オレの前では泣いてくれないだろうか。
「オレはもう、泣かないよ。……泣かない」
泣いたのは……あのときが最後だから。
――――――…………
――――……
火照り続ける全身。ひとまず浴びたシャワーも、掻いた汗を流せただけでそれは静まらず。
「――――……ぷはっ」
かなりの時間、洗面所で顔を冷ましてようやく、その熱も落ち着きはじめる。
「はあー……」
今でも、感触が残っている。
いつまでも触れていたい柔肌。あまい、唇。
……今でも目に、焼き付いている。
体中桃色に染めて。快楽に涙を浮かべて。触れる度に体を捩って、その心地よさに出てしまいそうになる声を、必死に我慢している可愛い顔。
今でも、耳に残っている。
快楽に溺れながら、それでも一生懸命オレの名前を呼んで、そして好きだなんて言ってくれた、愛おしくてしょうがない声。
『は、恥ずかしくて……死んじゃいそう……』



