オレの中にあったこいつの、『何かが嫌だ』という、不確かな拒否感覚。
――――……危険人物。嫌な奴。気味が悪い。
それはきっと、無意識のうちにそう感じ取っていたからだ。
「自分で言ったくせに“今は”と言うのは、結局はわかっていないのと一緒だ。不可能を諦められないことをなんて言うか知ってる? それはね、無謀って言うんだよ」
【あれはもう破格。人間の域を遙かに超えてる。そうそうやられはしない。……君は君の方法で、あいつを守ってやってくれればいいんだよ】
「……かわいそうな弟くん」
「……」
でもそれが今、何なのか。
……ようやくわかった。
「……あ。そっかそっか。弟って呼んだらダメだったんだよね」
【よく考えてもみてくれ。今回の事件、これで本当に終わると思うか?】
【勿論たとえばだ。このことは厳重に処理された分可能性は低い。でもそれも決して“ゼロ”じゃない】
【まだ血を求めているならいい。……けれど、どこかの誰かが、あいつの力を、頭を知ったら?】
【もしも、もしも今にでも戦争やテロをおっぱじめようとする奴らがあいつの存在を知ったら……?】
【今後もこういった事件がないとはとても言い切れない】
――やっぱり、間違いなんかじゃなかった。
「ヒナタくんどうかした? 何かあった?」
「……腹空きすぎただけ」
「おお、確かに背中とくっつきそう!」
「それはさすがにない」
「ふふっ。それじゃあ一緒にご飯買いに行こっか! ナンパ対策!」
「お互いのね」
すっと詰められた距離。擦れ違い際に偶然首元を過ぎ去って行った冷たい風。
……思わず息を呑んだ。しばらく、冷や汗が止まらなかった。
『――……またね? クジョウヒナタくん』
(……シントさん、どうやら大当たりみたいですよ)



