それがわからなかった俺は首を傾げていると、彼女はすっと視線を下げて少し寂しそうに微笑んだ。
「最近、どこか元気がなくて。ぼうっとしてることも、多くなったの」
「……あ。もちろん浮気とか疑ってるわけじゃないよ? さっきはあんな風に言ったけど」……と。彼女が言うそれが、一体誰のことなのかなんて、訊くまでもなくて。
「レンくんはあんな風に言ってたけど、わたしと一緒の時はたいてい寝ちゃってるんだ。なんでだろうね」
それは、あなただから。
あなたがそばにいるから彼は、何も考えずに、ただ安心して眠っていて……。
「だから、わたしのせいでそんな風になっちゃってるんだなってことは、もうなんとなくわかって――」
「違います! あおいさんのせいなんてそんなこと……!」
「アイくん。Be quiet.」
「……あ、I'm sorry.」
すると彼女はふっとおかしそうに笑って、「だから、『……ほんと。どうしちゃったんだろうね』って言ったんだよ」と、俺がずっと知りたかった疑問を、俺から訊くことなく答えてくれた。
どうして彼女には、何もかもわかってしまうのだろう……。
「わからないこと、だらけだよ」
「……えっ」
「ふふ。アイくんわかりやすい顔してるから」
そして、彼女は一度ふうと、ため息に似たようなものを吐いて夜空を仰いだ。
「だからね、誰かに訊いてしまいたいんだ。わからないから教えてって。どうやったら、ヒナタくんはまた、元気になってくれるんだろうか……って」
けれど、そう言って次にこちらを見つめる瞳は、どこか悪戯に細められていた。
「だからもう、教えてもらおうかな、なんて思ってたり」
「ええっ!?」
「いやいやアイくん。わたしだけじゃなくてヒナタくんの方も見てたの丸分かりだったからね。君が何か知ってるってことくらい」
「そんなことは」
「あるからいちいち動揺してる。言えないから、動揺してるんだよね?」
――だから、と。
彼女は悪戯に微笑んで、俺にとあるものを渡してきた。
「……あおいさん、これは……?」
「あおい特製☆魔法のステッキ!」
「そして、またの名をただの木の棒という」と、彼女は楽しげにそれを渡してすっとしゃがみ込んだ。……意図していることはわかったけど。
「ダメです、あおいさん」
「まだ何も言ってないよ?」
「さすがにわかります。地面に書けって言うんでしょ」
「お。正解」



