「あおいさんは今まで信じて待ち続けてた。だから、今度は俺らの番」
「……え?」
そんな彼の隣で頬杖をつきながら。
俺も、大好きだった彼女の方へ、視線を流した。
「怖かったと思うよ。このまま消えていってしまうと、そう思っていたんだから」
「……そんなの、絶対にさせなかった」
「俺らはね? わかってたから。でもそんな、誰が救ってくれるかも、本当に救ってもられるかもわからなかった状態で待ち続けてたあおいさんは、心底からすごいなって思うよ」
「……そうだね」
俺だったら、どうだろうか。
あんなことをさせられてまで、生に縋り付こうなんてこと。……もしかしたら、思わなかったかもしれないな。
――だから、彼女はすごいんだ。
「待とうよ一緒に。しょうがないから、苦しいの、聞いてあげるよ。嫌だけど」
「ははっ。そんなに嫌なんだー」
「嫌だよ。だって俺は笑って『いってらっしゃい』って言ってあげるんだから。笑って『おかえり』って言ってあげるんだから」
「……はは。いいなあそれ」
「でしょう? これが、俺のできる精一杯だと思うからね」
「……アイ」
俺は。ね?
君は君で、してあげることが……してあげなくちゃいけないことがあるはずだ。
「まずはちゃんと話してあげてよ。あおいさん、そんなことになってるなんてギリギリに知ったらきっと驚くよ? それこそ君のこと嫌いに」
「それは絶対にない」
「……その自信ムカつく」
「お褒めのお言葉ありがとー」
「でも」と。「何よりも先に、覚悟しないと」と。彼は遙か遠くを見つめた。
「九条くん……」
「それぐらいの覚悟、……してからじゃないと言えないや。ごめん」
「じゃあ別れたら俺がもらうね」
「は? あげるわけないじゃん。あいつは一生オレのもんだよ」
「あれ? 覚悟は?」
「はあ? ……違うし。それぐらいの覚悟っつってんの」
「あはは。わかってるわかってる。けど、ごめんけど、そういう覚悟するんだったら、俺は付け入るよ」
「ハッ。できるもんならどうぞ? いくらでも」
「……ねえ。すっごいその自信に溢れた顔、海に投げ入れたくなったんだけど」
「やりたかったらやってもいいよ? でも、それであとからぶん投げられるのはアイの方だよ」
「……強力すぎるよ。ボディーガードが……」
「いいでしょ」
さーっと、海風が吹いていく。少し強いそれに、思わず俺は顔を背けたけれど……。
「……やんないよ」
彼の、ただ只管に彼女だけを見つめる視線が、横顔が、真っ直ぐな言葉が、やっぱりかっこよかった。



