あんなことがあったあとに熟睡できるほど、案外神経図太くできてないんだなと。嬉しいような、悲しいような。
昼間に望月紅葉さんの捜索が無事終わり、一行はひと安心したように顔を緩ませた。俺も、見つかってよかったと心の底から喜んだ。
でも、どうしても気になることがあり眠りにつけず。少し夜風に当たろうと、同室の人たちを起こさないように俺は、静かに部屋を出た。
――――――…………
――――……
「……九条くん」
“あおいちゃん印”の麦わら帽を押しつけても。憎たらしく返ってこない反応や文句に、半ば呆れながらため息を落としながら、彼の手を振り払っても。
「……っ」
だらりと垂れた手は、彼女がいなくなってからずっと震えていた。
「そんな弱い君に、強いあおいさんは任せられない」
「……」
「今のままの君に、あおいさんを幸せになんてできない」
「っ、そんなのあいつが選んだら」
「だから何」
徐々に研ぎ澄ます空気に、彼は言葉が出ないようだ。
こんな風に、完全に敵意を剥き出しにしてるとこなんて、見せたことなどないからだろう。
でも、これだけで気圧されてるようじゃ。俯いて俺から逃げるようじゃ。
……本気で任せられないよ、九条くん。
「気持ちはわかるよ。俺だって、その話を聞いて嫌だったに決まってるでしょ? でも、だからってあおいさんが選んじゃったら、彼女は幸せになれないの? そう決まってるの? だから君はそうやって言わないまま引き摺って、帽子の中に隠れて逃げてるの? 話したらあおいさんが、ほぼ確実にそれを選ぶから」
「ちが……っ。オレ、は……」
「言ったでしょ? 気持ちはわかるって。でもその道を君が塞いじゃダメだよ。そんなの、あおいさんが一番嫌に決まってるでしょ?」
「……ごめんなさい。わかって……るん、です」
「九条くん……」
「みんな……さ、強いよね。オレなんかよりよっぽど」
「だからまだ、無理です。……ごめんなさい」と。決して謝ることではないのに、苦しげになんとかそう声を絞り出す九条くんに、俺は小さく笑った。歳相応……ううん、小さな子どもみたいに見えたから。



