すべての花へそして君へ②


 スマホを置くと、机の書類の山が崩れそうになる。慌てて二人で支えて、再びほっと息を吐いた。この量を今まで父や楓に任せていたのかと思うと、本当に申し訳なさでいっぱいになる。
 取り敢えず今は、これまでの空白を埋めていくために、どんなことだってしてみせるさ。

 まあこれくらいなら、大学に行くくらいなら、ハッキリ言ってちょろいもの。縁談処理は後々の関係に響いてくるので、そちらの方が正直面倒だ。
 人の想いをなんだと思ってるんだ。何度も何度も、突き返しても返ってくる、あと自分の署名と印を押せばいいだけの書類なんて。


「あー……キレそう」

「まあな。俺も正直何発か殴りたい」


 皇信人から朝日向葵への縁談なんて、外部に漏れでもしたら大事だ。
 俺が生きていたことも、朝日向に跡取りの娘がいたことも、一気に世間に……世界中にバレてしまう。

 いずれにしても、こんなの葵にはまだ聞かせられない。やっと、平和に暮らせるようになったんだ。
 ……今は、“いつまで続くかわからないこの時間”を、大切にして欲しい。


「楓、その辺は頼むよ。このことはまだ絶対外部に漏らしてはならない」

「承知致しました」


 もしそのときが来れば――――。
 そのときは、俺の口から言ってやろう。……きっと、彼女なら大丈夫だ。

 それから楓は、トレイごとコーヒーを置いて、片手を振りながら部屋を出て行った。そのコーヒーを一口飲んで、座り心地だけは最上級の椅子へと深く座り込む。


【……とはおっしゃいますけど、真っ白だとそれすらもままならないんですってば】


 先程、彼女が言っていたことが妙に気になった。いや、“胸騒ぎがした”と言った方が、この胸に広がる違和感を表現するには正しいのかもしれない。
 実はそのことで、先日の誕生日パーティー中に彼と話をしていたのだ。