すべての花へそして君へ②

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 面白いくらい一瞬で姿を消した彼女に、ふっと小さな笑いがこみ上げてくる。
 ……一瞬で、よかった。後ろ姿を見るのは、まだ正直つらい。

 もう、隠しておくのは、無理なんだろう。さっきだって隠しておけなかった。あいつだって気づいてるんだろうな。


「てっきりあの人のこと、呼び捨てにしてたから腹立ってたんだとばかり思ってたけど……」


 どうやら、名前とは別のところでオレは妬いていたらしい。
 きっと、いつの間にか仲良くなっていたせいだろう。オレの知らないところで。


(普通なら、呼び捨てで呼び合える関係の方が、親密に見えたりするのにね……)


 いつもの方が、何倍もやさしさを感じた。愛しさを感じた。
 どうやら思った以上に、あいつに名前を呼ばれるのが好きらしい。


「……早く帰ってこいよ、ばか」


 君に、話さなければいけないことがある。
 ……君に、伝えたいことがある。

 きっと君は怒るだろう。
 もしかしたら泣き喚いてオレのことを戦闘不能にさえするほど、ボコボコにするかもしれない。

 ……寧ろ、そうしてくれた方がいいかもしれない。
 それでもオレは、覚悟を決めたから。だから――……君に、話そう。


「本質は変わらない、か。そうだね」


 愛しているのは、生涯ただ一人。君だけだ。