「よくな~い!!」
そして案内された備え付けのシャワールームは一つしかないらしく、彼と代わり番こで入ることに。
『先入っておいで。オレはあとでいいから、ちゃんと温まってくること。いい?』
端から見たら暑そうな雪だるまさんにそう言われたので、わたしは温まりつつ、でも待ってる彼のために、いつもよりも急いでシャワーを浴びました。……ここまではよかったのにっ。
「ちらちら見るんじゃなくてさ、堂々と見ちゃえばいいのに」
(なっ……!?)
……なぜか、半裸の彼氏に襲われかけてます。
いや、いろいろあるんだよ? この経緯に至るまでが――
「あおいが勝手に、オレの裸見て、叫んで、照れて、顔隠して、チラチラ見てきただけでしょ?」
素っ裸は見てないよ!? 上半身だけね!?
……ううう。あとは全くその通りだけども。い、いや。でもね……? シャワー室から出てきて、彼氏の半裸見たら叫ぶでしょ? 照れるでしょ!? ……ち、ちょっと見たいでしょ? ね?? 読者の皆さんそうだと言ってええぇ~。
(ま、待てわたし。落ち着くんだ。このままいくと完全に変態じゃないか……!)
保て平常心。取り戻せ信頼。
「いや、変態って知ってるけどね。オレ」
そうだったあ~……!!
「ほら。折角目の前に来てあげたんだから。手退けて思う存分見れば?」
「……!? まっ、間に合ってますっ!!」
「……なにそれ。他の男の裸とか見てるんだ。へえ。浮気発言ですかねーそれは」
「ちがっ。そういうことじゃなくって……!」
今ね、本当にピンチなんです。壁際まで追い込まれてるんです。逃げ場ないんですよ……!
顔を手で覆っていてもわかる。目の前には、首にタオルを掛けている上半身裸の彼。自分の両側か片側には、少し逞しくなった綺麗な腕。
そして、こちらを楽しそうに見ているであろう整いすぎている美貌。
(……は。鼻血出そう……)
妄想しただけで、本当に赤いのがツーって流れ出そうだった。
でも出したら出したで完全に変態人間と確定されることになるかも知れないと思って、取り敢えずそれだけは必死に我慢していた。(もう遅いかもしれないけど、絵面的に何とか鼻血は回避したい……)
「……!!??」
……それなのに。指先に。指の付け根に。手の甲に。
「ん……」
手首に。見えないのをいいことに、目の前の彼は吸い付くようなキスを、何度も何度も落としてくる。
「っ!!」
肩に手を置かれただけだというのに大きく跳ねる体に、小さく笑う音が聞こえる。そんな風になってしまうのが途轍もなく恥ずかしかったけれど、全身は次第に熱くなっていくし、頭の中はいろいろなことについていけてなくて、もう限界で……。
「……あおい」
とどめと言わんばかりに、耳元で甘い吐息たっぷりに名前を呼ばれた日にゃ……そりゃ、オーバーヒートにもなりますって。



