「だからね――?」そう言って、俯く彼の顔を覗き込んだ。
「きっと、溜まることってそんなにないと思うんだ。わたしの信念を貫く限り。一生懸命、言葉で尽くす限り」
「つまりあんたは変わり者、と」
「ふふっ。そうだね! でも、さすがのわたしも、やっぱり溜めちゃうことってあるよ? 現に今だってちょっとモヤモヤしてるし……」
「え。ヤバいじゃん。ただでさえ馬鹿な蓋がもっと馬鹿に」
「ああ、大丈夫大丈夫。まずわたし蓋なんて持ってないから。溢れたらそれで垂れ流しだから」
「いや、それって不味くない?」
「でも、ヒナタくん言ったでしょ? わたし、変わり者なんだよ。だから、蓋なんてついてないけど人よりも受け止める器が馬鹿デカくなってるんです」
「……確かに、それだったら蓋なんかなくても大丈夫かもね」
彼は小さく笑ってそう言うけれど、わたしはそれにゆっくりと首を振った。
「言ったでしょ? ヒナタくんがいるから、わたしはわたしであれるんだ。強くいられるんだよ。それに、もし溜まっちゃってもヒナタくんのキッス一つあれば、わたしなんて元気いっぱいさ!」
――なんてったって、変態だから!
ハッハッハと辛気臭い空気を吹き飛ばそうとしたけれど、続く言葉は彼に飲み込まれた。
「……え。な、なん……」
驚いた言葉も、どうしたのって言葉も。
何度も何度も、彼はわたしに紡がせないままそれをそっと塞いでくる。
ただ、やさしく。
本当に触れ合うだけの、もどかしいキスで。
「嘘吐き」
「……へ?」
「元気いっぱいだって? 逆に溜まったって顔してるけど」
――それこそ、本当のフラストレーションってやつ。
「……それは、ヒナタくんのキスに問題があると思うの」
「そうやってオレのせいにするんだ」
「ふふ。でも大丈夫! ちょっと元気になった!」
「ちょっとかい」
鋭い突っ込みにふはっと思わず噴き出して。彼の両手を、そっと包み込むように握る。
「大丈夫。溜まったらヒナタくんのところに飛んでくるもの。何とかしてもらえばいいもの。だから君は君のまま。ありのままでいてくれればいいんだ。無理に悩んで言葉を探さないでいい。あなたは、あなただけは、正直者でいてください」
そして一度瞳を閉じて。
吸い込んだ息を吐きながら、目の前の彼を見つめる。
「わたしにとってヒナタくんがそうであるように、わたしも、ヒナタくんにとってそんな存在になりたいんだ」
「……あおい?」
「あのね、ヒナタくん。……実はわたし――――」



