タカトと違い、彼はわたしとヒナタくんだけじゃなくその劇にいた人全員の庇護を示したのだろう。
それはシントだから成せる技だ。今の彼らと皇を比べれば、力の差は歴然。
【彼らに手を出したら皇次期当主が許さない】【自分に手を出そうものなら彼らがそれを許さない】
こんなところかな。ちゃっかり者め。なんてあざとい。
けれど、ヒナタくんはまだ何かに納得していない様子で眉根を寄せている。気にしていることは、何となくわかる。
「頭痛い?」
「そうだね」
「だよね。わたしもー」
「あんたも?」
「うん。……こういう手法ってさ、地位の高い人たちの間ではきっとごまんと溢れてると思うのね」
「そうだね」
「明らかに違うのは場数。わたしはこういう駆け引きの場には居合わせなかったから。口は達者でも、本当の腹の底まではわからない。予想が外れたらそれまで」
「あの人相当苦労してるってことだよね。結局」
そう。でも彼が実際に動き始めてまだ日は浅い。
つまりはまだまだこれからということ。伸び代を大きく残してここまでしてくるとなると、正直うかうかしてはいられない。
そして今ここでこうして、約束を結んでおいてよかったと思う日は、きっと目と鼻の先にあるだろう。
(でも、先手を取られたのは正直悔しいものがあるんだよねー)
ちょっと……その……いろいろやることがあるから、ひとまずそれが片付いたあとでもいいかなって。
……はあ。今度から、気になることは先に済ませておこう。そうしよう。
「信頼するって、結構勇気がいることだよね。本家丸投げしてるし」
「……そうだね」
「でもね、先手を取られて悔しいのもあるんだけど、だからこそ嬉しいとも思えるんだ。それに足る人間であると、彼らにそう思ってもらえるように、わたし頑張るよ」
「……大丈夫。あんたなら絶対に裏切らないってわかってるから信用してくれてるんだ。オレも、あんたを信じてるよ」
「ありがとう。今のも……さっきも」
「……さっき?」
「どっちみちヒナタくんが言わなかったらわたしが言うつもりだったから。だから気にしないで?」
『大事な友達が困っているなら手を貸す。こいつはそういう奴なんですよ』
そう言うと、彼はばつが悪そうに視線を外し、がしがしと頭を掻いてひとつ、大きなため息を落とした。
「発言には十分に気を付けます……」
「……え?」
「わかってるつもりだったんだ。これでも」
「……ヒナタくん」
「でも、改めて思い知った。自分の言葉が、どれだけの影響力を持ってるのか」
「ヒナタくん」
「今回はまだよかったケースだと思う。でも今後、もっと重い状況になったら、正直今のままじゃ……」
「ヒナタくんってば」
「は? 何。今オレが喋って」
「あれ見て!」



