「それじゃ。女の子たち待たせてるから僕は行くね。二人ともまたね。お幸せに」と、ひらひら手を振って彼はわたしたちの前から去って行った。
「……あれ、結局あの人何しに来たの」
「これ渡しに来たんだよ?」
「ああそうか」
道明寺とともに彼らの家の残した傷跡は大きく。その新しい柱となった彼らは、今までのことを償うために、まずは犠牲者となってしまった人々の元へお詫び行脚していたのだ。勿論、九条家にも足を運んだそう。
けれど、わたしの家、朝日向と花咲、アキラくん家の皇には取り次いでさえもらえず門前払い。結果、親睦会で何とか話す機会を得ようと、彼……主に彼の父が無礼を承知でいろいろ企てたのだった。
「それで、証明っていうのはどうするの」
「“参加します”でお返事するよ」
「……え? どういうこと」
「あれ? ヒナタくんのとこにも行ってない?」
その場で封を開け、彼にもよく見せてあげる。
そう。彼が持ってきたのは、端から縁談関係の書類などではなかったのだ。
「【創立記念式典への御招待状】?」
「百合ヶ丘のね。恐らく生徒会メンバーには行ってると思うよ」
「……え、ごめん。縁談の下りは?」
「簡潔に言えば『本家の意向に背き、朝日向家御息女様への絶対的な信頼を寄せ、新たに此処へ信頼関係を築くことを誓います』と言ったところかと」
「いやわっかんないわ。どうして今までのことでそういうことが言えるのか、オレにはさっぱり」
「無理もないよ。というか、わたし以外には無理だと思うよ?」
「……それは何。その人間離れした予測能力の賜物って言うの」
「いやいや。そんな大層なものじゃないから」
タカトからこの招待状のこと聞いていて、皇と、朝日向か花咲に郵便で送ってもわたしとアキラくんまで届かないんじゃないかって心配してたから、じゃあ文化祭来るときに持ってきてと言っただけの話。
まあ、わたしたちが取り次がなかったのはそんな必要がなかったからだ。恐らく皇側も考えていたことは同じだろう。因みに、アキラくんにはアイくんがその招待状を渡したらしい。〈是非ご家族でおいでください〉って文言入りで。
「んぶぶぶ……」
回答が気に食わなかったのか、彼には無言で両頬をブチュッと潰されましたけど。



