そのあと二人して文化祭を回ることにしたのだけれど、どうやら彼は【ミステリーサークル体験】が気になっているらしい。「それじゃあ行ってみようよ!」と、誘ってはみるものの「いい。いらない。教えてくれるだけでいい」の一点張り。
そんな、頑なに首を縦に振ろうとしない恥ずかしがり屋なヒナタくんをなんとか連れて行こうと、説得しているときだった。遠くから聞こえたわたしを呼ぶ声に振り返れば、そこには見知った顔が。
「葵さん」
「タカト! 来たんだね」
「はい。つい先程。……主役だって聞いてたので本当はもうちょっと早くに来られたらよかったんですけど」
「…………」
「それに薫から、藍が劇に乱入してるって聞いてて。ああもう、すごい見たかったのに」
「……ふーん。そっかそっか」
「あれ? どうかしました、葵さん」
「いいえー? 別に、何もありませんよお? タカトゥ⤴︎」
「あ」
「ぶはっ」
気付いたのか、タカトはアハハとポリポリ頬をかき。発音がそんなにおかしかったのか、ヒナタくんは噴き出してお腹を抱えている。やっぱりツボ浅いよね、意外と。
「けど、これには理由が。僕はあなたに敬意を払って」
「それはまた、別の機会に別の場所ででいいんじゃないかな? だって、今はお友達として来てくれたんでしょう?」
言葉に詰まった彼は、一度わたしの隣にいるヒナタくんへ視線を向け、「それじゃあ素でいかせてもらうけど」と、一つ息を吐き出した。
「葵。君に会いたくて今日という日をずっと待ち望んでたんだ」
「……あれ。なんか知ってんだけど、この感じ」
「女誑し王子じゃないかな? わたし、ツバサくんとタカトをお手本にしてたから。因みに割合は1:9」
「ああ、それでね。なるほどなるほど」
と、言いつつヒナタくんはわたしを背中に隠した。どうやら、いろいろ危機感を感じ取ったらしい。
「ほら、だから言ったんですよ。敬意払ったままの方がいいでしょう?」
「そういうことじゃないと思うんですけど……」
「選ぶ言葉の問題かな? 普通に『久し振りー!』で十分だよ」
「そう? じゃあ。……葵、久し振りだね」
「そう? 久し振りでもなくない?」
「こ、このあとどう切り替えしたらいいかな、九条さん……」
「え。思ったこと言えばいいんじゃないですか?」
「思ったこと……。……葵にとってはそうかもしれないけれど、僕にとってはとても恋しく思うほど長い間だったよ」
「恋しいに異議あり」
「そこは普通に、『じゃあこの間振りー!』でいいんだよ」
「……なるほど。日本語難しいですね」
「こいつに日本語教えられるようじゃ不味いですよ」
「完全否定できないのが悔しい……」



