「それで? 何がレンくんのせいだったのかな?」
「……忘れてると思ったのに」
「残念ながら、忘れたくても忘れられないんですよね、わたし」
それから文化祭を見て回りながら、恐らくヒナタくんの方が忘れていそうな話題を振ってみる。思い出してくれたようで何より。
「親指姫の最中、だったかな。カナが抜けたから最後の担当もオレがするって報告に来たんだよ。アキくんにはもう報告済みって言ってさ」
「うんうん」
「それで、報告ついでにアキくんには最後のタイトルを【眠り姫】にしてもらうようお願いして来たって言ってて」
「うんう、……ん??」
「『キスシーンもする予定だから楽しみにしとけよ』とか言われたら、黙っておけるわけないじゃん」
「わたしでもわかるけど、完全にそれ、ヒナタくん遊ばれてるよ?」
「わかってるよ。でも、もししようものなら劇ぶち壊してでも乱入するつもりだった」
「おう、それはなんだか激しい展開……」
……ん? でも待てよ? そこまで聞いていたってことは、もしかしてヒナタくん自分でお姫様に立候補――
「だから、何かしそうになったらいつでもレンに攻撃できるように舞台袖に隠れておくつもりだった。吹き矢持って」
「吹き矢!? 穏やかでない……」
ま、率先して女装するような真似をヒナタくんがするわけないか。
結構似合ってたんだけどな。さすが経験者。口に出したら怒られるだろうけど。
「そのつもりだったけど、まあレンはあんたと同じこと考えてたんだろうね」
「え。……わたし今、口に出してた?」
「顔に出してた」
「おう……」
そして、気付いたら目の前にわたしの顔があって、寝不足だったこともあり、何も考えないまま思わずあんなことをしてしまったと。
その他何とか記憶の隅っこに残っていたのは、眠る前に首が痛かったかもしれないってことと、『シントさんお願いします』ってレンくんの声。
ヒナタくん的にはものすごい黒歴史物なんだろうけど、わたしにとってはなんだかんだ素敵な思い出になったので、お叱りは見送っておくことに決めた。



