「まあ正直アイくんとシントの足下には全然及ばないけどね」
「……わかってるってば。だから目先のツバサを目標に……」
「ふふっ。にしてもヒナタくんって柔道できたんだねー! てっきり剣道だけだと思ってたのにー」
「まあね。誰かさんがそれはもう馬鹿みたいに強いので」
「あ。多分それわたしのことだ」
「多分じゃなくてそうだから」
でも、それがあったから、意表を突かれたツバサくんは目を丸くしていたんだ。
体を鍛えてたのは、そういう鍛え方をしていたから。教えてもらわずとも、型を見れば誰に教えてもらってたのかなんて一目瞭然だもの。
はい、これでお終いと、打ち身に湿布を貼ってから救急箱を閉めた。
「困ったヤキモチ妬きさん」
「妬かせるような真似しないでください」
「ふふ。はーい、ごめんなさい」
そこまで目立った傷はないが、なんだかんだでツバサくんに手酷くやられてしまったみたいだ。クマさんの恨みは恐ろしいね。
「あ。ちょっと待ってヒナタくん。口のところもちょっと切れてる」
片してしまった救急箱を取りに立ち上がろうとソファーから腰を上げると彼は、これくらい舐めとけば治ると、だから早く文化祭を見て回ろうと、わたしの腕を掴んだ。
「……あおい? どうし」
別に、何がきっかけとか。そんなハッキリしたものはなかった。確かに、そこまで酷い傷じゃないし、本当に舐めておけば治るくらいだ。ただ、唇を見たら劇中のことを思い出して……気付いたら、体が動いていた。
「……なんか、昨日からいろいろ大胆だね。積極的」
立ち上がろうとする彼に覆いかぶさるように。
気付けば上から、彼の唇を塞いでいた。
「……いやだ?」
「大歓迎。寧ろすげえ嬉しい。たまんない」
「……まだ舐めた方がいい?」
「ん。お願いしよっかな」
「了解しましたご主人様」
腰にまわってきた腕に乗じてわたしも彼の首に腕を回して。
「……あ、でも待って。ドア鍵してない……」
「ごめんけど、それを待ってあげられる余裕は今持ってないかも」
一度離れようとした体がぴったりとくっついたと同時に、今度は彼に下から唇を塞がれた。
完全に身動きが取れなくなったわたしはすぐに抵抗の意思を解き、しばらくの間お互いを味わうことにしたのだった。



