すべての花へそして君へ②


「まあ正直アイくんとシントの足下には全然及ばないけどね」

「……わかってるってば。だから目先のツバサを目標に……」

「ふふっ。にしてもヒナタくんって柔道できたんだねー! てっきり剣道だけだと思ってたのにー」

「まあね。誰かさんがそれはもう馬鹿みたいに強いので」

「あ。多分それわたしのことだ」

「多分じゃなくてそうだから」


 でも、それがあったから、意表を突かれたツバサくんは目を丸くしていたんだ。
 体を鍛えてたのは、そういう鍛え方をしていたから。教えてもらわずとも、型を見れば誰に教えてもらってたのかなんて一目瞭然だもの。

 はい、これでお終いと、打ち身に湿布を貼ってから救急箱を閉めた。


「困ったヤキモチ妬きさん」

「妬かせるような真似しないでください」

「ふふ。はーい、ごめんなさい」


 そこまで目立った傷はないが、なんだかんだでツバサくんに手酷くやられてしまったみたいだ。クマさんの恨みは恐ろしいね。


「あ。ちょっと待ってヒナタくん。口のところもちょっと切れてる」


 片してしまった救急箱を取りに立ち上がろうとソファーから腰を上げると彼は、これくらい舐めとけば治ると、だから早く文化祭を見て回ろうと、わたしの腕を掴んだ。


「……あおい? どうし」


 別に、何がきっかけとか。そんなハッキリしたものはなかった。確かに、そこまで酷い傷じゃないし、本当に舐めておけば治るくらいだ。ただ、唇を見たら劇中のことを思い出して……気付いたら、体が動いていた。


「……なんか、昨日からいろいろ大胆だね。積極的」


 立ち上がろうとする彼に覆いかぶさるように。
 気付けば上から、彼の唇を塞いでいた。


「……いやだ?」

「大歓迎。寧ろすげえ嬉しい。たまんない」

「……まだ舐めた方がいい?」

「ん。お願いしよっかな」

「了解しましたご主人様」


 腰にまわってきた腕に乗じてわたしも彼の首に腕を回して。


「……あ、でも待って。ドア鍵してない……」

「ごめんけど、それを待ってあげられる余裕は今持ってないかも」


 一度離れようとした体がぴったりとくっついたと同時に、今度は彼に下から唇を塞がれた。
 完全に身動きが取れなくなったわたしはすぐに抵抗の意思を解き、しばらくの間お互いを味わうことにしたのだった。