それで、ようやくクマさんを見つけたところでツバサくんが帰ってきて、荒れ果てた惨状にさすがのお兄ちゃんもプッツン。兄弟喧嘩勃発。
ワカバさんに大怒られして、その日は二人とも夕食抜きになったらしい。
「それはヒナタくんが悪いよ。ちゃんとクマさん返した?」
「だって、ほんとはオレのものなのに」
「いや違うって」
「でも、だからって捨てるつもりはなかったよ。だってあんたがわざわざあげたものだし」
「ただ、全く同じものを作ってもらって、それに盗聴器と発信器とその他諸々の機能を付けてからそれはツバサにあげて、本物はオレがもらっとこうと……」って、悪戯が悪質すぎるから。危うくツバサくんのプライベートが完全にヒナタくんに支配されるところだった。
「それで? さっき話してたのは?」
「『昨日よくもあいつに触りやがったな』って、何したのか洗い浚い吐けって言ったらマジ腹立つこと言いやがって……」
(多分全部間違ってないと思う……)
「それに、『あんな顔させておくお前が悪いんだろ』って、まともなことも言われて……」
「それに関しては、ヒナタくんだけじゃなくてわたしも悪いけど……」
「それで、最終的には『俺はクマのこともまだ許してねえからな。本気でお前ぶっ潰しに行くぞ』って女々しいこと言われてマジで負けるかと……」
「……うん。ヒナタくんが悪いね」
「痛っ! わかってるからもっとやさしくしてよ」
確かに、あのときのツバサくんの気迫はすごかった。相手がヒナタくんになったからって、加減しないにもほどがあるというか……。
それにヒナタくんはヒナタくんでお姫様の恰好だし。まあ、途中でドレスの裾捲り上げてたけど。下にズボンバッチリ履いてたけど。
「でも、ヒナタくんが戦ってるところ、わたしはじめて見たかもしれない」
「……あれ、そうだっけ」
「うんっ。正直絶対ヒナタくん負けると思ったから、二人やっつけてすぐ助けにいこうと思ったんだよね」
「なかなか酷いことハッキリ言うね」
けれど、あんなヒナタくんの顔を見てしまったら、迂闊に手は出せなかった。
擦り傷を作っても。何度もお兄ちゃんの剣に体を打たれても。決して彼は姫は、折れなかった。何度も何度も立ち上がった。
「さすがに、竹刀を飛ばされたときは助けに入ろうと思ったんだけど」
「いらないよ助けなんて。自分の身は自分で守れる」
「……そっか」
最後、剣を構え攻撃しようとしたツバサくんの足を払い、襟元を掴んで一本背負い。剣を奪い、倒れている彼の顔の真横へ剣を突き立てて――――
『オレの勝ち』
ボロボロになって、彼にそう言い放ったのだ。



