すべての花へそして君へ②


「だから今はこれだけ」と。にっこり笑った彼は、微かに唇を掠めるキスをした。


「……あた、あたしが足りません……」

「じゃあ、……どうぞ?」


 やさしい笑顔で手を広げた彼に、ぷうっと頬を膨らませて。
 むぎゅーっと抱きつくと彼もまた、思い切り抱きしめてくれた。


「そう言われたらできないっ」

「いいじゃん別に」

「え?」

「だって、これからずっと一緒にいるんだから。今したらなんか……もったいない」

「……かなくん」

「だから、これから二人で考えよう? 二人で一緒に、幸せになれる方法」

「うん……」

「……あれ? 何か納得いかない?」

「……やっぱり、あれだけじゃ足りない」

「いやいやいや! だからって初っ端下からはおかしいから!」

「だったら上ならOKなのか。あいわかった」

「わあー! ちょ、ユズちゃん、お願いだから落ち着いて」

「観念するんだかなくん」

「待って! 待ってユズちゃん! ここはね? そう、いろいろ順番を守って」

「かなくんに合わせてたらあたし、すぐに三十歳超えそうだもん。はい、ということでバンザイしてー」

「しないって……! と、取り敢えず元気になったんなら一緒に文化祭まわろうよ! ね!?」

「……うむ。それはとっても魅力的」

「で、でしょ……? だから、ひとまず一旦俺の上から降りて――」


 ――――ガラガラッ。
 その時、保健室の扉が、なかなかの勢いで開いた。そこにいたのは、白衣を着た長身の男性。恐らく彼が先程話していた臨時の養護教諭の方だろう。
 あたしとかなくんは、完全に説明できないこの状況をどうしたもんかと、彼の瞳を見つめながら冷や汗を垂らしていた。


「元気そうならよかった」


 けれど彼は、おかしそうに笑って「やるんだったらちゃんと鍵閉めとけよ。代わりにやっといてやる」それだけ言って、再び保健室を後にした。


「ちょっ、……松本先生!!?? 助けてくださいよー!」

「やっぱり先にかなくんを味見させてください。許可ももらった」

「えっ、ちょ……ユズちゃん肉食過ぎ! お願いだから一旦落ち着いてってば!!」


 若干涙目の可愛い彼を目の前に、やめろと言われてやめられる人がいるなら連れてきてくださーいっ。


「大好きだよ! かなくんっ」


 ……やっと。やっと、掴めた。