すべての花へそして君へ②


「……いやだ」

「……え」

「やめないでよ」

「……かな、くん……?」

「何それ。俺のこと嫌いになった?」

「えっ。ち、ちが」

「だったらどういうこと!」

「――!?」

「さっきユズちゃん怖いって言った。怖いってそういうことじゃないの」

「…………」


「……お願いだから、黙ってないで何とか言ってよ……」そう言って、彼は脱力したように、頭を俯かせる。
 そんな彼を見て、彼の言葉を聞いて、さっき起こったのは決して夢でも幻でもないのだと。やっと、自分の中で認識できた。


「……いの」

「え? ……えっ!? ゆ、ユズちゃん……」


 理解したら、もう涙が止まらなかった。


「……きらわれて、ないの……?」

「……えっ?」

「あた、あたし。かなくんにきらわれたかと。おもっ……」

「いやそれこっちの台詞。なんでそんなこと思ったの」

「だ、だってかなくん熱海で……」

「うん」

「よ、夜にお誘い、くれたじゃないですか……」

「ん? そうだね。そう……だけど?」

「星、……見に行ったじゃないですか」

「う、うん」

「その時……」

「その時……?」


「俺、なんかしたっけ」と、彼は腕を組んで頭を捻っている。


「……それだけで、終わったじゃないですか」

「え。あ、うん。……え? それ? いや、まああのときはノープランだったというか、勢いで行ったから……」

「特に何もなかったけど、かなくんずっとため息ついてて……」

「え」

「だから、ちょっとでも楽しんでもらいたくて頑張って話して」

「えっ」

「……それでもやっぱり、話が止まったらかなくんずっとため息ばっかで」

「ええ!? ちょ、ちょっと待って……? ため息ついてたの、俺」

「うん」

「……ずっと?」

「うん」

「うわ。それ最低だね……」


「マジかー……」と、今度は頭を抱えている。


「はあ。それは、怖かったね。ごめん。完全に無意識だよ」

「……うん」

「あと、ため息ついてたのは多分、緊張してたからで」

「うん」

「……特に話題を探そうとしなかったのは、ユズちゃんが来てくれたことがただ単に嬉しくて、それだけで楽しくて。声……聞いてたくて」

「うんっ」


 ゆっくりと顔を上げた彼の頬は、ほんの少し恥ずかしそうに染まっていた。