すべての花へそして君へ②


 ダンッッと強く地面を蹴り、真っ先に向かったのはシンデレラの王子様。
 正直このメンツが本気でかかってきたら、彼女を守ることはできそうにないので、剣を交えながらステージ袖に控えていたキク先生に向かって突き落とした。


「うわっ! っと」

「大丈夫か。……つうかお前、いろいろ挑発しすぎ。いや、なかなかいいキャラしてたけど」

「あっちゃん!!」

「聞いちゃいねえ……」


 背中からかけられた声には振り向かなかった。目の前から、殺気染みたやる気が三人分、こちら側に向けられていたから。


「怪我だけはしちゃダメだからね」

「……お。てことは、少々怪我させちゃうのはOK? シンデレラの王子様」

「そう言って、あっちゃんは絶対そんなことしないでしょ?」

「さあどうかな」


 どうやら、彼女と話していられるのもここまでのようだ。彼らの準備が、完全に整ってしまったらしい。


『あと三人、か。申し訳ないが、僕はこの後姫様を愛でるので忙しい。キスと所有印だけでお預けを食らっているからな』


 その言葉に、三人の表情がぴくりと動いた。


「手加減無用。三人とも、今出せる本気の全力をぶつけに来い。……この『僕』が、本気で受けて立ってみせよう」


 同時に動き出した彼らに、真っ正面から受けて立った。



 カンッカンッ――――
 ――――キーンッ。


 そんな剣の攻防は、音のように決して軽々しいものではなかった。
 体重の乗った、しかも男性の力も合わせた一撃一撃がすごく重くて、三人同時となると防ぐので精一杯。


「――ふふっ」


 きっと、ツバサくんのお父様でも。リミットのあったわたしでも、無理だったかもしれない。


「……おい、葵?」


 どうかしたのか。
 そんな風に聞こえた音は、もう一度笑ってしまった自分の声で掻き消された。


「いやーごめん。やっぱりみんな、女のわたしには全力なんか出してくれないんだなと思って」

「いや、結構頑張ってますよ? 俺ら」

「まあ、俺は若干手抜いてるとこあるけどね。葵に怪我なんかさせらんないし」

「まあ、俺もそれはありますけど」

「あ、やっぱり? そうだよね。だって――」


 ――今のわたし、十分の一の力も出してないもの。