『それで? 別れの挨拶はもう終わったのかな?』
『ま、済んでなかったところで、もうクソ野郎なんか待ってやるつもりないけど』
そう言って構えてくる、親指姫と白雪姫の王子に、僕は大きく笑い声を上げた。
『殊勝だな。そうやって自分たちがやられてしまう時間を少しでも延ばそうとする君たちが、すごく健気に見えるよ』
『……なに』
『それに……僕が、この僕がクソ王子だと? 笑わせる。クソ王子なのはお前たちの方だろう』
『……黙っておけば言いたい放題言いやがって』
『だってそうだろう? よく考えても見ろ。自分たちの魅力のなさを他人に擦り付け、気に入らないから殺しに来た? ハハッ。なんて滑稽な王子たちだ。こんな王子となど、端から幸せになどなれなかっただろうな、姫君たちは』
『はあーよくもまあ、いけしゃあしゃあと、自分のこと棚に上げて悪口言えるね。さすがクソ王子』
『悪口? 何を言ってるんだ。すべて事実じゃないか。顔はよくても中身がクズなら、四人のクズ王子があっという間に完成だ。その点僕は、顔もよし頭もよし、そしてとっても強い。姫君たちが僕に惚れてしまうのも無理はない』
『……あ。なんかすごいムカついてきた。ねえ、もうやっちゃっていい? もう我慢できない』
今にも飛びかかってきそうな彼らに、ビュンッと音を鳴らしながら切っ先を向ける。
『悪いな。僕は思ったことは口にする主義でね。隠し事は昔から向いてないんだ。……だから言う。確かに僕は女誑しであり、国を追放されてからも、僕は女性を愛し、そして愛されたかった。ああ認めよう。だって正直国を追放されたからって女の子たちと離れるのは嫌だったし』
ぐっと唇を噛みしめながら、『僕は王子、女誑しの王子……』と心に言い聞かせ、何とかそこまで言って。
でも――と。今度は真っ直ぐに彼らを見つめて言い放つ。
『やっと見つけたんだ。心から愛したいと思う人が。たった一人だけに僕の心を身を、捧げたいと思う女性が。……だから、僕は負けない。帰る場所がある限り。彼女が僕を同じように愛してくれている限り。僕のことは、いくらでも罵るといい。けれど、彼女を傷付けることはたとえ誰だろうと許さない。一瞬でも僕の大切なお姫様にその切っ先を向けたこと―――心の底から後悔させてくれる!!!!』



