そんな言い合いは長くは続かなかった。割り込んでくるように、上から剣を振るわれたからだ。
「くっ……」
慌てて姫を背中に庇いすんでの所で剣を受け止め、攻撃してきた雪の女王の王子に今にも掴みかかっていきそうな背中の姫も……頑張って止めた。
ちょっと。一応劇中だから。サイレントだから。お姫様は大人しくしといて!
『最後の別れは済んだか』
『……あ、生憎、ようやく巡り会えた愛しい姫君と、別れる予定など今後一切有りはしないんだよ』
『戯れ言を』
一度、二度、……三度。
竹刀を合わせるたび、タイミングよく、まるで本物の剣を交えているような効果音が会場を包み込み、先程までおかしそうに笑っていた観客の声が一気に静まり返った。
『決めた。貴様への粛清は全員で行うことにする。せいぜい、背中のお姫様が傷付かないよう守っておくことだな』
そうして、剣を構えた四人を迎え撃つため立ち上がろうとしたところを、控えめにマントを掴まれ止められてしまう。
慌てて振り向いたそこには、必死で。そして寂しそうな表情を浮かべた姫がいた。よく見るようになってしまった、本当に寂しそうな顔だ。
そんな姫にふっと笑みをこぼし、彼女の前に跪きながらそっと両の手を取る。
『何も心配することはありません。ただあなたはそこで、僕の帰りを待っていてください。必ず、……必ず。すぐに戻ります。あなたを置いて、どこかへ行ったりなどしません。……僕は、見つけたから。居場所を。僕が僕でいられる場所を。帰ってくる場所を。大切な人を』
そっと、姫の指先に口付けて。
「約束は必ず守ります。……言ったでしょう。『僕』が『あなた』の笑顔を守ると」
「……あおい」
「だから、そこで見ていてくれ。あなたの王子は誰よりも強いのだと。その目に、心に焼き付けるように」
マントを彼女に預け、颯爽と僕は立ち上がった。



