「……え。シントさん完全に顔出ししてるんだけど、もう大丈夫なわけ……?」
「そんな話は聞いてないから、ここがきっと公の場の初顔出しなんじゃないかと……」
「……ここでいいの。やっぱあの人バカなんだね」
「まあ、らしいっちゃらしけどね」
というかそもそも、雪の女王に王子様なんて出てくるっけ? 平気な顔してあなたのお兄さん首から提げてますけど。
「きっと、あるって設定で話進めるんだろうよ。よくもまあ恥ずかしげもなく女王やったり王子やったり……忙しいなあいつ」
それに相槌を入れようとしたところに、ビュン――と視界に飛んできた何かを、思わず反射でキャッチした。
『――受け取れ、クソ王子』
飛んできたのは剣……のように見える竹刀だった。
『貴様だけ武器がないのは不公平だからな。まあ有り難く思うことだ』
そう言って、シンデレラの王子が腕を組んだままこちらを蔑むように見下ろしてくる。
けれど、どうして他の物語の王子たちが、こうして敵意を向いて僕を潰そうとしているのかわからなかった。
「あーそれはですねクソ王子。あなたがいろんなお姫様たちを誑かして、結局自分中心だけ幸せに丸く収まるという大団円ルートへの選択肢を選びに選んだからですね。その結果、お姫様と幸せに結ばれるはずだった王子様たちが、クソ王子へ逆襲しに来たというわけです」
わたしの心をまるで読んだのかのように、スポットライトで照らされたレンくんが、そんな補足をしてくれた。
「そ、れは……王子をそういう設定にした人がそもそも悪いと思うんですけど」
「なに。文句でもあるわけ」
「あるっちゃ大有りにあります」
「……まあ確かに、はじめにこんな物語にした人が原因ではありますね」
そして朗読担当の地獄耳レンくんは、続けてこんなことを吐き捨てた。
「だって、その人はこうも言っていたでしょう? 『それは、王子による復讐劇の始まりでした』なんてことを」
言い切ったと同時、パチンと音を立ててスポットライトは消え、レンくんの姿は完全に観客の中に紛れてしまった。
え。復讐ってそういうこと……? 僕に、他の王子が……ってこと!?
「ちょっと、どういうこと」
「いやいやいや、さすがにそこまでオレ考えてないし。はじめに考えたシナリオと全然違うから今」



