そんなアナウンスが入ってしまい、それは聞けないままアイコンタクトで二人して「取り敢えず劇頑張ろう」と言い合った。
「……あんなことって。何」
「いっ、……今は劇!」
「終わったら絶対教えてね。わたしだってこんな大勢の前で長めのキスされて恥ずかしかったんだから」
「(……真顔怖い……)」
無事に、後で教えてもらう約束を取り付け満足していたところへ、猛スピードで近付いてくる殺気にわたしは『――姫!!』と彼の腕を引っ張り、そのまま抱え上げて大きく距離をとった。
「……ちょっと、あれだけ人が運ぶなって言ってるのに」
「今は【女の子】だからチャラにして」
でないと今頃――その言葉を掻き消すように、先程までわたしたちがいたところへ、ドオーンッッ!! と大きな音を立てて何かが降ってきた。
「はあ!? え? な、なに……?」
メキメキ。バキバキ。メシメシ。パラパラ……。
木片が大破し、粉々になるような、そんな音が立ちこめる煙の中から聞こえる。
恐怖からか。きっと無意識に『お姫様』は『僕』の服を掴んでいた。僕も、そんなお姫様の体を、ぎゅっと自分の方へ引き寄せる。
『あーあー。ここにもかわいそうなお姫様がひとりー』
そして目をこらすと、煙の中に誰か立っているではないか。しかも一人ではない。三つの影が、そこにはあった。
『あんたが、国を追放されて世界中のお姫様誑かしてるっていう王子様?』
『目撃情報の特徴によく似てるから、そうだと思うよ』
『だったら、容赦なくぶっ潰しても問題なしだよね』
砂煙から現れたのは、どこかの王族かと思うほど身形の整った黒髪短髪の長身三人組。
『ああ、こいつで間違いはなさそうだ』
そしてその後ろから現れた、高く髪を結った小柄な人は……まるで本物の王子のようだった。
『――見つけたぞ、クソ王子』
……否、ちょっと口の悪い王子だった。
そして、彼らに思わず二度見した。
『どうする? ここはやっぱり全員で一気にかかっちゃう?』
僕と同じ名前の人には【親指姫の王子】と。
『それでもいいけど、ここは手始めに俺が一人で』
お姫様の実兄には【雪の女王の王子】と。
『えー。もうめんどいからさっさと終わらせて俺らのお姫様取り戻そうよ』
僕の元執事には【白雪姫の王子】と。
『何を言っている。……そんな簡単に終わらせてなるものか。私たちの苦痛と屈辱を、篤と味わってもらわねば気が済まぬ』
さっきまでシンデレラだった人には【シンデレラの王子】と。
……彼らの首から、そんな名札がぶら下がっていたからだ。



