すべての花へそして君へ②


 地を這うような……いや、それじゃあ生温い。地獄の底から湧き上がってきたような恐ろしい声に、二人は身震いした。


「だったら、そのワンホール分きっちり扱いてやるよ」

「……あ、アオイさん? なんだか趣旨がちょっと変わってきてるようなんですが。そもそもオレ、全然関係ない――」

「チカ、諦めろ。連帯責任だ。師弟仲良く頑張ろ。ね?」

「小首傾げて可愛く言っても、道連れにしようとしてることは変わんねえんだからな!? てかアキ、体震えてね……?」

「……今からほんとの地獄が待っている……(カタカタ)」

「えっ。ちょ、アオイさん待って! オレ本当に関係ないから――」

「ワンホール食べた罪は重いぞ。恨むんなら師を恨め」

「いや待って! お願いっ! やさしくしてえぇええー!!」


 ――――メッタメタに扱いてやりました▼


「「………………」」


 二人は屍のように倒れています。口から魂のようなものが出ているのが見えます。


「……ショートケーキ選ばなかったのにっ」

「いやアキ、種類の問題じゃねえから。もういいからこのまま黙っとけって」


 どうやら仕留め損なったらしい。
 けれど、次の行動を起こす間もなく、二人はいろいろわたしから感じ取ったのか、大慌てでステージ袖へと消えていった。
 ……そんなに怖かったかしら。一応手加減はしたんだけど。


(けど二人とまともにやり合ってたら……それこそ、本気の二人と戦うとなると、ちょっと手加減できそうになかったし)


 ひとまず、怪我人無しで事が済んでよかったと安心していると、先程の調子ではなく、しっとりとしたやさしい声が、物語の再開を静かに伝える。


「――襲いかかってきた茨を薙ぎ倒しその先にあったのは、細やかな細工の施してある大きな扉でした。王子は一つ息を吐き、その扉にゆっくりと手を伸ばします。扉の向こう側、そこは女性の部屋のようです。奥に進むと、ベッドの上に誰かが横になっていました――」


 その合図とともに、ステージの袖から誰かが運ばれてくる。
 それと同時、黒衣二人が最後の選択肢を掲げた。


 選択肢その1
【お姫様に口付けをする】

 選択肢その2
【お姫様にキスマークをつける】


「……えっ」


 何となく、運ばれてくる人の予想はできていた。黙って従うような人じゃないから、どうするんだろうとは思ったけれど……。


「…………んー……」


 完璧眠らされてるんですけど。
 みんなすごい、なんというかあれだね。怖いもの知らずというか、後先考えないというか。