未だ興奮冷めぬ中、二人して小声でそんな話をしていたけれど、そっと彼との距離を縮めたわたしは、さらに小さな声で話を続けた。
「……きっともうご存じだろうし、今ので多分わかったんじゃないかなと思います」
「……? 何がや?」
「本当はマサキさん、今頃五体満足じゃなかったかもしれませんねーって話です」
「……よーわかったけど、笑顔で物騒なこと言わんといてくれ」
「よおわかってらっしゃるならいいんです」
もしあのとき、わたしがチカくんのことで頭がいっぱいで、制限のことなんか無視して暴走していたら……。
だから、わたしには謝罪も感謝もいらない。寧ろわたしが、モミジさんに感謝と謝罪をするべきだ。ま、もう十分伝わっているだろうけど。
「わたしが思うに、『さっさと新しい彼女でも作れヘタレ』って、仰ってると思います。確実に」
「え。葵ちゃんまだ傷口に塩塗るん……?」
「あくまでも代弁です」
「もうちょっと傷癒やさせてんかー……」
彼らは【茨①】と書いてあったから、きっと次があるんだろうなと踏んでいた。
「いくよ!」
「うん!!」
だからって、これは酷い。
わたしに彼らを倒せというのか。なんて酷な。ていうかある意味一番の弱点なんですけど。
「アカネくんオウリくん、黒衣はもう大丈夫なの……?」
「もう大丈夫なのお」
「ばっちりなのお。ねえ?」
……の、割に恰好は黒衣のままだけど。
けれど、次の瞬間に【茨②】の名札をぶら下げた彼らは構えをとった。
「あおいチャンには悪いけど!」
「あかね違う! 天然誑し王子だよ!」
「それもそれでどうなの……」
わたしはただ、最初のヒナタくんの指示で、こうやって王子のキャラ作りしているだけなのに。とんだとばっちりだ。
「王子サマには悪いけど!」
「このお城で眠るお姫さまには指一本触れさせないからあ!」
「「いざ! 尋常に勝負!!」」
二人同時に、息ぴったりで飛びかかってくる彼らに、完全にサイレントドラマではなくなったなあ(わたしだけは台詞あったけど)と、小さく笑いながら。
『――この先に姫がいるなら尚の事! そこを退いてもらうぞ茨たち!!』
彼らと対峙するわたしに、観客から「わああ!」と、期待で大きく膨らむ歓声が上がった。



