――当然、通常の【眠り姫】であれば、城を覆う茨は、王子に道を空けるようにここで自然と退けていくであろう。
「――……けれど、その王子の前に、茨は堂々と立ち塞がりました」
わたしの目の前に現れたのは、背中に竜の刺繍でも入っていそうな、スタジャンを着たガラの悪げな人たち。
そして、彼らの首には【茨①】と名札が吊り下げられている。
一体何がどうなったんだ? と、頭に疑問符を浮かべている王子や観客に、すかさずアナウンスが入ってくる。
「只今より、王子による華麗なるバトルシーンが始まりますので、皆様瞬きせずしっかり目をこらしてご覧ください。あっという間に終わってしまいます」
「因みに【茨役】は有志の方々です。この場を借りてご紹介とお礼を申し上げます」と、やはり違和感のある声に、いろいろな意味で頭を抱えた。
ステージに上がって早々嫌な予感的中。すでに、劇ぐっちゃぐちゃじゃないですか。せめて世界観は守るとかさ。……なんでもアリだな、ほんと。
「あーそれと、王子は頑張って茨倒してくださいね。じゃないとフィナーレ迎えられないので」
「……と、言うことや。ま、その辺お手柔らかに頼むわー」
その中の一人、キャップを目深に被った長身の男が、そう呟いた。
このメンツ、この声、そして有志。……なるほど。
『――――どうぞ、こちらこそお手柔らかに』
――遠慮は無用。
なら、いっちょ暴れてやりますか。
――――――…………
――――……
きっと、瞬きをしてしまった人には見えなかっただろう。目で追えた人も、いるかいないか。
一般客に確認できたのは恐らく、連続して何かが落ちるような音と――
「……容赦、ないなあ……」
「これでも手加減しましたよ」
「ほんまかいな」
いつの間にか倒れていた、大の男たちがステージの上でのびている姿だけだろう。
「……え? あー、……ハイ。撃退オメデトーゴザイマス」
遅れて、大歓声と拍手喝采がホールに鳴り響く。
……え? 是非専属SPに? うちの用心棒に……?
いやいやよしてくれ。そんな褒めないでおくれよー。照れちゃうじゃないか。
「……っと。でも、先に遠慮はなしでって言ったのはマサキさんの方ですよ? それに、すっかり手抜いたら“俺たちの気が済まない”って、また来られそうだし」
「ははっ。ここはいっそ、そんなんも考えられへんくらいこてんぱんにやっつけちゃえーってか?」
「……それも、ありますけど……」



