すべての花へそして君へ②


 ――当然、通常の【眠り姫】であれば、城を覆う茨は、王子に道を空けるようにここで自然と退けていくであろう。


「――……けれど、その王子の前に、茨は堂々と立ち塞がりました」


 わたしの目の前に現れたのは、背中に竜の刺繍でも入っていそうな、スタジャンを着たガラの悪げな人たち。
 そして、彼らの首には【茨①】と名札が吊り下げられている。

 一体何がどうなったんだ? と、頭に疑問符を浮かべている王子や観客に、すかさずアナウンスが入ってくる。


「只今より、王子による華麗なるバトルシーンが始まりますので、皆様瞬きせずしっかり目をこらしてご覧ください。あっという間に終わってしまいます」


「因みに【茨役】は有志の方々です。この場を借りてご紹介とお礼を申し上げます」と、やはり違和感のある声に、いろいろな意味で頭を抱えた。
 ステージに上がって早々嫌な予感的中。すでに、劇ぐっちゃぐちゃじゃないですか。せめて世界観は守るとかさ。……なんでもアリだな、ほんと。


「あーそれと、王子は頑張って茨倒してくださいね。じゃないとフィナーレ迎えられないので」

「……と、言うことや。ま、その辺お手柔らかに頼むわー」


 その中の一人、キャップを目深に被った長身の男が、そう呟いた。
 このメンツ、この声、そして有志。……なるほど。


『――――どうぞ、こちらこそお手柔らかに』


 ――遠慮は無用。
 なら、いっちょ暴れてやりますか。


 ――――――…………
 ――――……


 きっと、瞬きをしてしまった人には見えなかっただろう。目で追えた人も、いるかいないか。
 一般客に確認できたのは恐らく、連続して何かが落ちるような音と――


「……容赦、ないなあ……」

「これでも手加減しましたよ」

「ほんまかいな」


 いつの間にか倒れていた、大の男たちがステージの上でのびている姿だけだろう。


「……え? あー、……ハイ。撃退オメデトーゴザイマス」


 遅れて、大歓声と拍手喝采がホールに鳴り響く。
 ……え? 是非専属SPに? うちの用心棒に……?
 いやいやよしてくれ。そんな褒めないでおくれよー。照れちゃうじゃないか。


「……っと。でも、先に遠慮はなしでって言ったのはマサキさんの方ですよ? それに、すっかり手抜いたら“俺たちの気が済まない”って、また来られそうだし」

「ははっ。ここはいっそ、そんなんも考えられへんくらいこてんぱんにやっつけちゃえーってか?」

「……それも、ありますけど……」