ゴッツ――ン。
『おばあさん、それはなあに?』
『これはね、錘というんだよ』
寝不足だからって、本番中に何を思い出してるんだわたしは。
出番を待っていた間、何度もゴツン……ゴツンと壁に頭を打ち付けていた。どうかしてる、ほんと。
「……ほんと、世の女性はいろんな意味ですごい」
また余計なこと考えた。
いい加減集中しなさい。もう一回……ゴツン。
あのあとは案の定寝坊して、それでもスヤスヤ気持ちよさそうに寝ている彼を叩き起こして、それはもう大急ぎで準備して……。
遅刻ギリギリのところで二人一緒に登校してきたら、それはそれは、いろんな目で見られ……。
『えー。みんなさ、もうそろそろいろいろ察しようよ』
と、空気読めない発言した彼に取り敢えず拳骨。
ほんとすみません、と二人して謝っておいた。
キサちゃんはね? まあ女の子だし、いろいろ本気で相談もしたし、訊かれるのはしょうがないとは思ってたけど。
みんな、ほんといろいろ察してくれて、訊かずにいてくれて本当に助かってます。ハイ。
(……このまま、何事もなく終わればいいんだけど)
でも、どうしてか。先程から胸がざわついて仕方がない。
それに、急遽変更でもあったのか。いろいろ訊きたいことがあるのに、未だ誰とも接触がとれない。
「――……姫をはじめ、多くの人たちが眠るお城の茨が美しい花を咲かせてちょうど100年の時。一人の王子様が、眠り姫を訪ねてそのお城までやってきます――」
にしては劇は続いているし、たいしたことではなかったんだろうか。それでも報告は欲しかったけど。
未だ不安は拭えない。……けれど、みんなならきっと大丈夫だ。
(――絶対、成功させてみせる)
大きくマントを広げ、再びわたしはステージの上へと戻っていった。



