すべての花へそして君へ②

 ――――――…………
 ――――……


 浅い呼吸を繰り返し、うっすらと重い目蓋を開けると、ぼんやりとした視界にはどこかで見たような天井が映った。
 酸欠で上手く動かせずにいた頭では、どうしてこんなところで寝ているのかすぐには思い出せなかった。

 二人で買い物に行って、それから一緒にご飯を作って、他愛ない話をして、テレビ見て、お風呂に入って。……順を追っているうちに、この辺りから彼の攻撃が始まっていたことを思い出す。


「……んあ、はあっ」


 けど、そんな気はしていた。そしてわたしは、逃げなかった。
 浴室でもいじめ抜かれ、ぐったりとした体は、何も纏わないまま有無を言わさず……というか言えず、ここまで連行。ベッドの上で組み敷いてきた彼は余裕のない顔つきで、でもそれでもゆっくり、時間をかけてわたしを愛してくれた。


「……あっ、もうだめ、だって……」


 はっきり言うと、何度気を失いかけたかわからない。というか、十を遙かに上回ってよく気を失わなかったなと、正直自分を褒めてあげたい。


「やあっ、んんん……はあっ」


 にもかかわらず、だ。
 未だ執拗に、けれど繊細に愛撫を続ける彼は、一度顔を上げては弱い耳元に濡れた唇と舌先を這わせ、体中を彼の熱で満たそうとする。かと思えば今度は、ただでさえ今一番敏感になっているところへ触れようと、ゆっくりと膝を掴んで。

 先程からこの繰り返しで、何度絶頂感を迎えたかわからない。でも、わたしの体はどうしてか満たされなかった。
 気を失いかける度、余計に体が疼いて、もっともっとと彼を求めたくて仕方がなかった。手近にあった枕を握り締めながら上げた嬌声は、……上げすぎてもう掠れかかっていた。


「はあ。……やっばい。ねえ、これ見て」


 満足したのか、顔を上げて髪にキスを落としてくれた彼だったけれど、意地悪く濡れそぼった指を見せられ、慌てて顔を背けた。


「気持ちよかった? ……ねえ。教えて」

「あ、っ……も、だめだっていって……」


 これ以上やられたらほんとおかしくなるから……!!

 そんななけなしの訴えも虚しく、後ろから抱き締めるように上から下まで刺激され、もう完全にノックアウト。意識を飛ばしすぎたわたしの体は、重くベッドに沈み込んだ。


「あ、やっべ。マジでやり過ぎた」


 はい。ほんと、さっきからそう言ってるんですけどね。あなた、全然聞いてくれなかったんですよ。夢中になってて。


「……怒った?」


 軽く音を立ててこめかみにキスをくれる彼の声は、まるで叱られる前の子どものようだ。全く、これも惚れた欲目か。甘いなわたしも。


「……おこってない」

「だったら顔上げてよ」

「今更ながら、頭がはっきりしてきて……」

「……ん?」

「……な、生々しさに、恥ずかしさが込み上げてきた……」

「いや、ほんと今更」