すべての花へそして君へ②


 そうして、黒衣さんが手にしているものに、選択の説明はなかった。

【剣】【毛布】

 その二つを持って跪く彼らに、わたしはわからない程度に微笑んだ。



『あなたが悪役の道を選ばれるのであれば、……僕も迷わず、ともに堕ちて行きましょう』


 飛び交ってくる氷の刃を避け
 少年は女王へそっと
 温かいブランケットを掛けてあげます

 その、少年の俊敏さにか
 それとも愚かさにか
 女王は目を瞠りました

 けれど、忽ち彼と距離をとろうとします


『一人にはもう――……させませんよ』


 しかし、それを阻止するように少年は
 彼女の冷たい体を包み込むように抱きしめました

 もちろん、女王は彼の腕の中でもがきます


 けれど、どれだけ暴れても
 彼の拘束が解けることはありませんでした

 女王は、力なく項垂れてしまいます


『ここに来る途中、男の子と女の子と擦れ違いました。彼らはこう言いました。【お城に近付いてはいけないよ。怖い雪の女王が帰ってくるよ】と』


 そして少年は
 彼らから聞いた話を女王にしました

 今までどんなことがあったのか
 どうしてここまでやってきたのか


 けれど、少年はその話を聞いて
 雪の女王と怖がられる理由がわからなかったのです


 だから、ここまで来たのだと
 だから、あなたを救いに来たのだと

 彼はそう言って、もう一度
 彼女の体を抱きしめました


『少年を、何とかしてあげようと、そう思ったのでしょう? だから、苦手な暖かい国まで、足を運んでいたのでしょう? あなたはどうやら、とことん不器用な方らしい』


 すると、忽ち女王の体やお城から
 凍えるような冷たさが引いていきました

 彼女は、このお城のお姫様でした
 呪いで雪の女王と呼ばれてしまうようになったようです


『もしまた悲しいことがあったなら、つらいことがあったなら、僕の名前を呼んで。いつでも君のところへ、僕は飛んでくると約束するよ』


 こうして、雪の女王は
 元の姿に戻ることができました

 喜びからか、それとも
 小さくなっていく彼の背中に寂しさを感じたからか

 たった一粒落ちた彼女の涙は
 春を告げる小さな花となったそうです



 ――最終演目の発表まで、残り1分。

 無事に、雪の女王編は卒倒者なく終わり、ようやく素直に上手側へ戻ってこられたわたしは、先程から疑問に思っていることを聞こうと、キサちゃんの姿を捜していた。


「……あれ? おーい、キサちゃん?」


 しかし、もう出番はないからか彼女の姿は見当たらない。
 もしかしたら男子の方を手伝っているのだろうか。彼女ならやりかねないが……。


「……うーん。わたしが間違っていなければ多分……」


 腕を組んで悩んでいると、最後の演目が発表された。最後は確か、順番的にアキラくんだったはずなんだけど。
 その、“聞き慣れない声”に違和感を感じつつ、最後の衣装チェンジをすることにした。

 ……このときはまだ、思ってもみなかった。まさか、あんなことをするハメになるなんて。



 ――――最終演目【眠り姫】、開幕。