すべての花へそして君へ②


『どこ! ……――どこにいるのっ!』


 昔々、北国よりもっと北の方角に
 氷でできたお城がありました

 そのお城には、美しい雪の女王と
 一人の少年がいたそうです

 そんな噂を聞きつけた一人の少女は、その彼が
 自分の兄弟のように仲のよかった少年かと思い

 彼を探しに長い道のりを超え
 雪の女王が住まうというお城までやってきました


 ……けれど少女は少し、
 少年に会うのが怖かったのです

 少年の心臓には目には
 悪魔の鏡の欠片が入ってしまい

 人が変わったように、彼は
 乱暴で冷たい性格になっていたからです


『――……っ! 見つけた! 私よ……? ずっと、会いたかったわ』


 けれど、そんな恐怖は彼を見た途端
 あっという間に溶けてなくなりました

 そして少女の涙で
 彼の心臓に入った欠片を溶かし

 そして少女の歌声で涙を流した
 少年の目に入った欠片を洗い落とし

 無事に再会を果たした二人は、
 仲良く家路を歩いて行ったのでした



『……消えた、か』


 暖かい国へと行っていた女王が
 城へ戻ってきたときにはもう、
 連れ去った少年の姿はありませんでした


『これはこれは、なんとお美しい女性だろうか。道に迷ってみるものだ』


 その代わり、
 それとはまた違った少年が一人、
 こんなところで彷徨っていました

 けれど雪の女王は、
 相手をする気にもなれませんでした


『凍りづけにされたくなければ、今すぐこの私の目の前から立ち去れ』


 まるで氷のように冷たく鋭い視線の女王に
 その少年は言います


『……あなたは、何をそんなに怯えていらっしゃるのですか』


 一歩前へ踏み出すと
 それから逃げるように女王は後退った


『来るな、無礼者』


 女王は魔法を使い
 氷でできた狼をその少年へ向かわせます

 けれど狼たちはあっという間に
 その少年によって薙ぎ払われました


『ほら、これが証拠です。……僕は決して、あなたを害するためにここへやってきたのではありません』


 その言葉に驚いた様子で
 女王はまた、その少年から距離をとりました


『……何を、ふざけたことを』


 それは、彼への怒りからか
 それとも違うものなのか

 戦慄く彼女の体を
 驚くほどの強い冷気が纏っていきます



『……もう一度言おう。今すぐここから立ち去れ。でなければお前をこのまま凍りづけにして食らってやる』


 鋭い氷の刃を生成した女王は
 その切っ先を少年へと向けました

 ……そして、少年は選びます。