すべての花へそして君へ②


『……さようなら。大好きな明るいおひさま』


 お金持ちのモグラと
 結婚することになったおやゆび姫は

 地中深く潜る前に一度
 お日様を見に行きました

 お日様を見て、思います
 先日傷を負った少年は、大丈夫だろうかと


『もう、会えない。……もう一度会いたいです』


 その少年を介抱したおやゆび姫は
 彼に会いたくて仕方がありませんでした

 ……本当は、彼が大好きだったのです
 彼と、もっと一緒にいたかったのです


『……さようなら。わたしのおひさま』


 涙を流しながら、おやゆび姫は
 真っ直ぐ太陽に向け、手を伸ばします

 もう一度、あなたに会いたかった
 もう一度、あなたに触れたかった

 そんな思いを、ぎゅっと胸に抱えました



 ――そう思っていたときです

 急に夜になったのかと思うくらい、
 おやゆび姫の世界が暗くなりました

 そして、声が聞こえます
 聞きたくて聞きたくてしょうがなかった声でした


『こんなところにいたんだね。ぼ……僕のかわいいお姫様』


 ちょっと照れているアキラくんが貴重で、そっちの方でも悲鳴が上がっていた。
 そして、再びひょこひょこと黒衣さんが登場。……えーっと、なになに……?


 選択肢1
【おやゆび姫と一緒に旅立つ+お姫様だっこ】

 選択肢2
【おやゆび姫と一緒に旅立つ+肩車】


「ぅおい!! なんだこの選択肢! 結局運ばれることに変わりねえだろ!?」

「はーい、そこのちっちゃいおやゆび姫はちょっと黙っててー」

「ひなっ、てんめえー! お前今担当じゃないだろ!? アキ、頼む。オレに……、オレに救済処置を……!!」

「ノープロブレム」

「いや、返しおかしいっつの……」

「ダイジョブ。今チカ、トッテモ可愛イ。自信持ツ」

「何でちょっとカタコトなんだよ」

「俺も今精神的ダメージが大きい」

「お、おう……。そうか。アキも大変だもんな」


 相変わらずチカくんは弄られ担当らしい。案の定、会場にはどっと笑いが起きている。


「……だいたいなあ、ヒナタが二日とも朗読担当引くなんておかしいんだよ。なんだかんだでやりたくなかったんだぜあいつ。提案してきた本人だっていうのに」


 なあ? なんて同意を求めてくる視線には小さく笑いで返すことにして、わたしはそっと、彼の――おやゆび姫の手を取った。


「うわっ! ちょ、待てアオイ」

「……やっぱり、お姫様だっこ嫌……?」

「……い、いや、死ぬほど嫌というわけでは。あ、あのな、男のプライドというものが邪魔してだな、素直に女に抱っこされるというのがまず不味い――」

「それじゃあ肩車にしよっか。よいしょっと」

「だあー!! マズい! 本気でマズい! スカートん中見えるっ。オレの沽券に関わる……!!」

「……股間に関わるの間違いじゃなくて?」

「思ってても女子がそういうこと言うもんじゃありません」


 上を向くと、つんと軽くおでこを突かれる。
 ……なんだろな。その可愛い恰好のせいかな。無性に悪戯したくてたまらない。