――幕が上がるまで、あと5分。
「何を言うかと思えばそんなこと」
「アオイちゃ」
「そんなことを言う必要はどこにもないさ。だって、この場のお姫様たちは全員【僕のもの】なんだから」
王子スイッチ――ON。
下からふっと不敵に笑えば、強張っていた彼の表情にピクリと歪みが生じた。それに今度は満足げに笑い、そのままマントを翻しながらステージ脇の階段を上がる。
「まあ、そんなことを言うくらい容易いこと。僕は君と違って彼女に慕われてるからね」
「……っ」
「お、おい葵。さすがにこれ以上は俺も黙っちゃ」
「ツバサくん。僕は昨日ね、やっぱり男の子ってすごいなあって。そう思ったんだ」
「……は? 何が……」
「大丈夫。……今はただ、黙っていてくれ」
背中越しにそう答えたあと、バサッとわざとらしく、大きな音を立てながら振り返る。
「そうやって他に振り回されるのか。これは君自身の問題だろう。彼女自身の問題だろう。……何が、もう迷わないだ。それのどこが覚悟だ。そんな覚悟ならやめてしまえ」
「それ……は」
「本当に彼女が僕を観に会いに来ただけだと思っているなら、勝手にそう思っていればいい」
「……」
「まだ選べないなら、君に彼女を笑顔にする資格はない」
「……!」
瞳を閉じてふっと笑う。……再び目蓋をあげたとき、そこにいたのは、いつもの彼だった。
「つくづく俺、アオイちゃんが男じゃなくてよかったって思うよ」
嬉しそうな笑顔でただ、笑っていた。



