すべての花へそして君へ②


「あおい、ちゃん……」


 空いたベッドへ寝かせてあげようとすると、ちょうど意識が戻ったのか、抱えている彼女から小さな声が上がる。


「ユズちゃん大丈夫……? どうなったか、覚えてる?」

「……あおいちゃんが主役って聞いたから、部活が終わってダッシュできて……」

「わ。走ってきてくれたんだね。ありがとう」

「そしたらちょうど、ガラスの靴選ぶところで……」

「うんうん」

「……あおいちゃん……」

「うん?」

「『僕のゆず』って言って」

「ははっ。ばっちり覚えてるみたいで何より」


 けれど、ベッドに寝かせてあげようとすると、彼女は首にしがみついてきた。


「やっぱりあおいちゃん好き。結婚して」

「……それは、わたしじゃない人に言うべきじゃないかな?」

「……あおいちゃんも好き」

「うん。ありがと」


 すっと緩んだ腕の力に顔を上げてみれば、彼女の顔色が少し悪いような気がした。
 どれだけ必死になって、ここまで来てくれたのだろう。……どんな覚悟で、ここまで来たのだろう。


「ユズちゃんが出した答えがどうであれ、わたしはこれからもユズちゃんのお友達だし、味方だからね」

「……あ、あおいちゃん」

「だからね? 今はこれだけ言っておく。……来てくれてありがとう」


 そう言って頭を撫でれば、彼女はぐっと堪えるように顔を歪ませた。
 それには小さく笑って。そっと、目元を手で覆ってあげた。


「だから、あなたの本当の王子が迎えに来るそれまで、ゆっくり休んで。……また会ったとき、可愛い笑顔を見せてね」

「あおいちゃん……」

「ん?」

「……やっぱり一回『僕のゆず』って言って?」

「ははっ。それは、いつかのためにとっておいてあげてよ」