「あおい、ちゃん……」
空いたベッドへ寝かせてあげようとすると、ちょうど意識が戻ったのか、抱えている彼女から小さな声が上がる。
「ユズちゃん大丈夫……? どうなったか、覚えてる?」
「……あおいちゃんが主役って聞いたから、部活が終わってダッシュできて……」
「わ。走ってきてくれたんだね。ありがとう」
「そしたらちょうど、ガラスの靴選ぶところで……」
「うんうん」
「……あおいちゃん……」
「うん?」
「『僕のゆず』って言って」
「ははっ。ばっちり覚えてるみたいで何より」
けれど、ベッドに寝かせてあげようとすると、彼女は首にしがみついてきた。
「やっぱりあおいちゃん好き。結婚して」
「……それは、わたしじゃない人に言うべきじゃないかな?」
「……あおいちゃんも好き」
「うん。ありがと」
すっと緩んだ腕の力に顔を上げてみれば、彼女の顔色が少し悪いような気がした。
どれだけ必死になって、ここまで来てくれたのだろう。……どんな覚悟で、ここまで来たのだろう。
「ユズちゃんが出した答えがどうであれ、わたしはこれからもユズちゃんのお友達だし、味方だからね」
「……あ、あおいちゃん」
「だからね? 今はこれだけ言っておく。……来てくれてありがとう」
そう言って頭を撫でれば、彼女はぐっと堪えるように顔を歪ませた。
それには小さく笑って。そっと、目元を手で覆ってあげた。
「だから、あなたの本当の王子が迎えに来るそれまで、ゆっくり休んで。……また会ったとき、可愛い笑顔を見せてね」
「あおいちゃん……」
「ん?」
「……やっぱり一回『僕のゆず』って言って?」
「ははっ。それは、いつかのためにとっておいてあげてよ」



