「伝えたいことは、本当にたくさんあるんだ。未だに君には、どう感謝をしていいかわからない。君に出会えてなかったら、今わたしはここにはきっと、いないだろうから。笑えてなんて、いないだろうから」
――でも、と。彼に負けないくらいの笑みで、改めて言葉を紡ぐ。
「あなたに、出会えてよかった。あなたを好きになってよかった。これからもずっとあなたが、……あなただけが、大好きです」
そして、小さく名前を呼んで……彼の両頬をそっと、包み込むように手を添えた。
「ヒナタくんの笑顔は、わたしが絶対――守るから」
一瞬目を見開いたのち、彼は「ははっ」と声を上げて笑った。
「やっぱかっこいいね。……強いね、あおいは」
どこか、泣きそうな笑顔だった。
「ヒナタくんがいるからだよ!」
「え……?」
「ヒナタくんがいるから。だから、わたしは強くあれるんだよ」
「……そう、なんだ」
わたしの言葉を噛み締めるように、彼は一度ゆっくりと目を閉じて。
「……そっか。ごめんね」
ふっと、やさしく笑った。やさしいやさしい、笑顔だった。
「ヒナタくんがいてくれてよかった。わたしのこと、見つけてくれたから」
「オレも」
「ねえ知ってる? わたしも、ヒナタくん無しじゃ生きていけないんだよ」
「……嬉しいこと言ってくれるね」
「だからね、これからずーっと。おばあちゃんおじいちゃんになってもずっと、一緒に笑い皺作ろうね」
「……そこは、ジジババになっても一緒にいようねでいいんじゃないの。皺って……」
「ずっと、隣で笑ってて」
「あおいの存在自体が面白いから、きっとすぐ笑うよ」
「ふふっ。そっか!」
「いや、それでいいの……?」
高校最後の文化祭一日目は、やさしい笑顔とともにそっと、幕を下ろした。
……この時の笑顔を、わたしは一生忘れない。
――――だから、【あの時】の笑顔も
きっと。一生。忘れない。
…………忘れ、られない。



