すべての花へそして君へ②


「伝えたいことは、本当にたくさんあるんだ。未だに君には、どう感謝をしていいかわからない。君に出会えてなかったら、今わたしはここにはきっと、いないだろうから。笑えてなんて、いないだろうから」


 ――でも、と。彼に負けないくらいの笑みで、改めて言葉を紡ぐ。


「あなたに、出会えてよかった。あなたを好きになってよかった。これからもずっとあなたが、……あなただけが、大好きです」


 そして、小さく名前を呼んで……彼の両頬をそっと、包み込むように手を添えた。


「ヒナタくんの笑顔は、わたしが絶対――守るから」


 一瞬目を見開いたのち、彼は「ははっ」と声を上げて笑った。


「やっぱかっこいいね。……強いね、あおいは」


 どこか、泣きそうな笑顔だった。


「ヒナタくんがいるからだよ!」

「え……?」

「ヒナタくんがいるから。だから、わたしは強くあれるんだよ」

「……そう、なんだ」


 わたしの言葉を噛み締めるように、彼は一度ゆっくりと目を閉じて。


「……そっか。ごめんね」


 ふっと、やさしく笑った。やさしいやさしい、笑顔だった。


「ヒナタくんがいてくれてよかった。わたしのこと、見つけてくれたから」

「オレも」

「ねえ知ってる? わたしも、ヒナタくん無しじゃ生きていけないんだよ」

「……嬉しいこと言ってくれるね」

「だからね、これからずーっと。おばあちゃんおじいちゃんになってもずっと、一緒に笑い皺作ろうね」

「……そこは、ジジババになっても一緒にいようねでいいんじゃないの。皺って……」

「ずっと、隣で笑ってて」

「あおいの存在自体が面白いから、きっとすぐ笑うよ」

「ふふっ。そっか!」

「いや、それでいいの……?」


 高校最後の文化祭一日目は、やさしい笑顔とともにそっと、幕を下ろした。

 ……この時の笑顔を、わたしは一生忘れない。





 ――――だから、【あの時】の笑顔も

 きっと。一生。忘れない。

 …………忘れ、られない。