それからいろいろな料理名を挙げて、ヒナタくんの反応を見ながら今日の献立を決めて……。
「ひーにゃん! やっと会えた……!!」
「……今日イチ嬉しそうな顔だね」
「こっち! こっち向いてひーにゃん!」
「いーや」
隙を見て彼の頭に猫耳をつけてやった。
もちろん嫌がられたけど、『外したらブラウス着るよ』って言ったら大人しくなった。
「ね。ねえひーにゃんっ。こっち向いて? わーらって」
やる気のない気怠げなひーにゃんの耳は、心なしか垂れ耳のように見えた。恐らく気分の問題だろうけど。
「……じゃあ、キスしてくれたら――」
ちゅっと、言い切る前にしてあげたら、彼は目をパチパチと瞬きさせた。あ。こんな表情もまた素敵。パシャリ。
「ははっ! どんだけ笑って欲しいの」
これが、惚れた欲目というやつなのだろう。
自分だけに向けてくれるこの笑顔が、やっぱり一番大好きで何よりも愛おしかった。
……何を差し置いてでも、守りたいと思った。
「……? あれ。今撮らなかったんだね。勿体なーい」
「はっ! もう一回! もう一回笑って!」
「そんなバカみたいに何回も笑えないよ。バカみたいに」
「……え。それってわたしにバカって言ってる? あ、バカかわたし」
「ぶはっ」
ヒナタくんは、意外と笑いのツボが浅い。これも、付き合って知ったこと。まだまだきっと、知らないことがあるはず。
……これから、いっぱいいろんなことを知られると思うと、未来が楽しみで仕方がない。
「あーおい。こっち来て」
「……あ。ヒナタくん猫耳外したー」
「さすがにジャージでスーパー行けないでしょ?」
「……行こうと思えば行けるけど」
無邪気な顔で手招きする彼に、首を傾げながら近付くと、急に視点が高くなった。
いきなり抱え上げてきた彼にびっくりして、慌てて肩を掴む。
「ど、どうしたの……?」
「あおいさん」
「は、はい」
「好きです」
「……!」
「今、オレがこうしていられるのは笑っていられるのは、あなたの存在があったからです。あなたに出会えた今まで、とても幸せでした。オレを好きでいてくれて……ありがとう」
見上げる笑顔は、あまりにも幸せそうで……。
「……ひなたくん」
なんだか、この笑顔だけで涙が出てきてしまいそうだった。



