すべての花へそして君へ②


 それからいろいろな料理名を挙げて、ヒナタくんの反応を見ながら今日の献立を決めて……。


「ひーにゃん! やっと会えた……!!」

「……今日イチ嬉しそうな顔だね」

「こっち! こっち向いてひーにゃん!」

「いーや」


 隙を見て彼の頭に猫耳をつけてやった。
 もちろん嫌がられたけど、『外したらブラウス着るよ』って言ったら大人しくなった。


「ね。ねえひーにゃんっ。こっち向いて? わーらって」


 やる気のない気怠げなひーにゃんの耳は、心なしか垂れ耳のように見えた。恐らく気分の問題だろうけど。


「……じゃあ、キスしてくれたら――」


 ちゅっと、言い切る前にしてあげたら、彼は目をパチパチと瞬きさせた。あ。こんな表情もまた素敵。パシャリ。


「ははっ! どんだけ笑って欲しいの」


 これが、惚れた欲目というやつなのだろう。
 自分だけに向けてくれるこの笑顔が、やっぱり一番大好きで何よりも愛おしかった。

 ……何を差し置いてでも、守りたいと思った。


「……? あれ。今撮らなかったんだね。勿体なーい」

「はっ! もう一回! もう一回笑って!」

「そんなバカみたいに何回も笑えないよ。バカみたいに」

「……え。それってわたしにバカって言ってる? あ、バカかわたし」

「ぶはっ」


 ヒナタくんは、意外と笑いのツボが浅い。これも、付き合って知ったこと。まだまだきっと、知らないことがあるはず。
 ……これから、いっぱいいろんなことを知られると思うと、未来が楽しみで仕方がない。


「あーおい。こっち来て」

「……あ。ヒナタくん猫耳外したー」

「さすがにジャージでスーパー行けないでしょ?」

「……行こうと思えば行けるけど」


 無邪気な顔で手招きする彼に、首を傾げながら近付くと、急に視点が高くなった。
 いきなり抱え上げてきた彼にびっくりして、慌てて肩を掴む。


「ど、どうしたの……?」

「あおいさん」

「は、はい」

「好きです」

「……!」

「今、オレがこうしていられるのは笑っていられるのは、あなたの存在があったからです。あなたに出会えた今まで、とても幸せでした。オレを好きでいてくれて……ありがとう」


 見上げる笑顔は、あまりにも幸せそうで……。


「……ひなたくん」


 なんだか、この笑顔だけで涙が出てきてしまいそうだった。