そしてひょいっと軽々持ち上げられ膝立ちにされると、下からじっと物欲しそうな目で見上げられた。
「今日ってどうするの。このまま帰る?」
「え? 今日は帰って夕ご飯作んないと」
けれどそれには素っ気なく、ただふーんと返すだけ。
代わりにぴったりと体を引き寄せられ、触れ合うか触れ合わないかのところでまた、彼は寂しそうに見上げてくる。
「今日、このまま帰っちゃうの……?」
「……そ、そうやってお強請りされても」
「ずっと触れたいと思ってたあんたに今日やっと触れられたのに」
「今日はご飯が……」
「あんたは触れたくないの。オレは、一晩中あんたに触れてたいよ」
「ひっ!? と、ば、ん……」
「……あ。エッチなこと考えた」
「ちっ!? ……がわ、ないけど。……ちがうの?」
「違わないよ」
下から真っ直ぐ射貫かれるような瞳に、ドクン――ッと大きく胸が鳴った。気付けば、噛み付くように彼の唇を奪っていた。
そんな行動に驚くこともなく、彼はすんなり、深くわたしを受け入れてくれる。
「ふぁ……。……ひな、んっ」
「まだ終わらせない。まだ足んないから、離れないで」
あっという間に主導権は向こうに握られ、久し振りのキスに、寂しかった心があっという間に溶けていった。
「んっ。……終わったら、このまま一緒に帰ろ。ご飯買い物行こ」
ちゅっと音を立てて離れたそこに、再び唇を寄せる。
「要望はある?」
「何でもいい」
「それが一番困るなあ……」
「全部食べたいから。だから、何でもいい」
「ははっ。そっかそっか」
自然と繋ぎ合った指先が絡まる。
再び離れると、今度は彼がわたしの唇を追ってまた塞いできた。
「それじゃあヒイノさんに連絡しなきゃ。一緒にスーパー行こー」
「ん。ご飯手伝う」
「先にお風呂入っててもいいよ?」
「今日は一緒に入るの。んでもってオレが洗う」
「……じゃあ、わたしもヒナタくん洗う」
「え。いいの?」
「パジャマ。貸してくれる?」
「……いる? いらなくない?」
「気分の問題。有ると無しとじゃ大違い」
「……Tシャツにしようか、カッターシャツにしようか、それとも普通にジャージにするか」
「え? 何でもいいよ?」
「気分の問題。男のロマン」
「そ、そうなんだ」



