すべての花へそして君へ②


 そしてひょいっと軽々持ち上げられ膝立ちにされると、下からじっと物欲しそうな目で見上げられた。


「今日ってどうするの。このまま帰る?」

「え? 今日は帰って夕ご飯作んないと」


 けれどそれには素っ気なく、ただふーんと返すだけ。
 代わりにぴったりと体を引き寄せられ、触れ合うか触れ合わないかのところでまた、彼は寂しそうに見上げてくる。


「今日、このまま帰っちゃうの……?」

「……そ、そうやってお強請りされても」

「ずっと触れたいと思ってたあんたに今日やっと触れられたのに」

「今日はご飯が……」

「あんたは触れたくないの。オレは、一晩中あんたに触れてたいよ」

「ひっ!? と、ば、ん……」

「……あ。エッチなこと考えた」

「ちっ!? ……がわ、ないけど。……ちがうの?」

「違わないよ」


 下から真っ直ぐ射貫かれるような瞳に、ドクン――ッと大きく胸が鳴った。気付けば、噛み付くように彼の唇を奪っていた。
 そんな行動に驚くこともなく、彼はすんなり、深くわたしを受け入れてくれる。


「ふぁ……。……ひな、んっ」

「まだ終わらせない。まだ足んないから、離れないで」


 あっという間に主導権は向こうに握られ、久し振りのキスに、寂しかった心があっという間に溶けていった。


「んっ。……終わったら、このまま一緒に帰ろ。ご飯買い物行こ」


 ちゅっと音を立てて離れたそこに、再び唇を寄せる。


「要望はある?」

「何でもいい」

「それが一番困るなあ……」

「全部食べたいから。だから、何でもいい」

「ははっ。そっかそっか」


 自然と繋ぎ合った指先が絡まる。
 再び離れると、今度は彼がわたしの唇を追ってまた塞いできた。


「それじゃあヒイノさんに連絡しなきゃ。一緒にスーパー行こー」

「ん。ご飯手伝う」

「先にお風呂入っててもいいよ?」

「今日は一緒に入るの。んでもってオレが洗う」

「……じゃあ、わたしもヒナタくん洗う」

「え。いいの?」

「パジャマ。貸してくれる?」

「……いる? いらなくない?」

「気分の問題。有ると無しとじゃ大違い」

「……Tシャツにしようか、カッターシャツにしようか、それとも普通にジャージにするか」

「え? 何でもいいよ?」

「気分の問題。男のロマン」

「そ、そうなんだ」