――だからさっきも言ったけど、愛されてんなーって実感したんだよ……と。
「それに、なんでも自分のことは後回しにするあおいが、それでもオレに会いに来てくれたんだよ? 嬉しいに決まってる」
彼は、わたしの口の端を親指でそっと撫でてキスをせがんでくる。
「(……結局、中途半端なことしても、却ってつらくなるだけだった)」
「えっ……?」
「オレだってね、オレの知らないところで勝手に違う奴にあんたに触れられて腹立ってるんだからね」
「それは……、……すみません」
「いやわかってる。結局悪いのはオレだから」
どこか落胆したように、大きなため息を落とした彼は、悩ましげな様子でじーっと床へ、視線を落とす。
その横顔に寂しさを感じて、彼の頬へ唇を寄せた。
「……今日ほんと可愛いことばっかするね」
「あのね、ヒナタくん」
「ん?」
「今までだって、そんなにずっと一緒にいたわけじゃないし、毎日会って、触れて、キスしてたわけじゃない」
「……うん」
「でもね、ただ寂しかった。つらかった。怖かった。距離って言葉がすごく……重かったよ」
「……そっか」
「お、お互い適度という言葉は弁えてると思うし、無理に距離、とらなくていいと……思って」
「……もしかして、それを言いたくてオレ捜してた?」
「……ヒナタくんは、わたしに触れたいって。思ってくれなかった? わたしは、ずっと思ってたよ」
目を瞠る彼の、次の言葉が少し怖くて。しがみつくように、肩口へ顔を埋めた。
「……もう、待てない。待ちたく、ないよ」
触れ合ったところからは、僅かに彼の動揺を感じた気がした。
それでも、わたしは離れなかった。寧ろもっとしがみついてやった。そんな動揺なんて寂しさなんて悲しさなんて、全部わたしが吸い尽くしてやるつもりで。
「(……これっきり、か)」
その状態のまま踏ん張ること数十秒。はっきりとは聞こえなかった呟きとともに、腰をそっと引き寄せられた。
「ねえ、オレの執着具合舐めてるでしょ」
「……へ?」
「ネチネチしてるの知ってるでしょ? ていうか、あんたがいないとオレ生きていけないんだよ。知ってる? 知らなかったの?」
「えっ?」



