道明寺の事件のことは、日本中を怯えさせるほどのニュースになり――――もちろんそれは、世界も例外ではなかった。何故なら、その脅威は手を広げ、海を渡る計画までも組まれていたからだ。
 ……覚悟は、していた。たとえ“わたし”には、罪がなくても。

 それなのに、次の週には学校に行けちゃうという異常の早さ、そして根回し。……いろいろ考えずに素直に喜んだよ。有り難く受け取ったよ。だって考えたら怖いから。
 登校も、ちょっと怖かったんだ。あんなことがあったし。でも実際行ってみたら案の定。わたしの心配を余所にいつも通り。いや、いつもよりも何故か人気だった。

 まあ深くは考えなかったよ。だってそんなの、誰のおかげかなんてこと、わかりきってたから。……その代わりと言っちゃなんだけど、他の生徒会メンバーがやつれていたような気がしたけどね。何故か一人はほくほくだったけどね。うん。もちろん深くは考えなかった。だってなんか怖かったから。

 あのままもし計画が遂行されていたら、受け取るはずだった卒業見込み証明のことだけど。もちろんそれは破棄してもらい、しばらくは授業の単位を補習で補うことになった。


『あーまあ、あれだ。要は、負けず嫌いなんだよ』


 けど何故かその補習の課題で、まさかの先生たちvsわたしの戦いが繰り広げられていたらしい。なんでも、いつも満点解答なのが悔しくてならないんだとか。道理で高校で習わないような問題があると思ったよ。T大レベルもいくつかあったし。
 ちなみに、わたしがそれに気づいたのはもう補習も終盤の頃。んでもって、山積みだったのはこの尋常じゃない課題の量のこと。毎度毎度時間がかかって仕方がなかったわ。先生たち容赦ないんだから。

 そんなことを教えてくれたキク先生は、有言実行で今でもわたしを雑用係として使ってくれている。……とは言うものの、たまに教材を運んだり、コーヒーを作ってあげたり一緒に飲んだり。一緒にお昼を食べたり。それくらい。
 こういうさりげないところがかっこいいんだけど、それを表立ってしないからなーこの人。……ま。彼はキサちゃんだけでいいんだもんね。せいぜいラブラブしてくれ。