ツンツンと。わたしがつけたキスマークを、彼は心底嬉しそうに突いている。……いろんな意味で、直視できなかった。
「で? 中途半端だけどこのままでいいの? もう抱きしめていい?」
無邪気な笑顔には逆らえないなと、改めて実感した。なんだか、彼の思い通りになって少し癪な気もするけれど。でも、答えは決まっていた。
がばっと立ち上がったわたしは、シャツが引っ繰り返しになるのも構わず、後ろからべりっと剥ぎ取った。……そして、思わずバサバサと。それはもうバッサバッサと。気付けば大きな音を立ててシャツを叩いていた。
決してこのシャツに罪はない。恨みもない。でも、そうせずにはいられなかったんだ。無性にそうしたくなったんだ。
「わたし、性格悪い……」
「え? なんで」
「だって、シャツこんなにして。……もう、着て欲しくないなって」
「だったらオレも、相当性格悪いね」
「えっ? そ、そんなことないよ! なんでそんな……」
言いかけてふと、先程まで着ていた自分のブラウスが目に止まった。
次にヒナタくんを見てみた。……笑った。持っているシャツを見た。もう一回ヒナタくんを見――「ぶはっ」……噴き出した。いろいろ、合点がいった。
「……もういい? 早く抱きしめて、上書きしたいんだけど」
そして彼は、座ったままの体勢で大きく手を広げた。
その言い方が仕草が、ちょっと可愛くて。束の間小さく笑っていたわたしの腕を、ほんの少しご機嫌斜めの彼は、ぐいっと足の間に引っ張り込んだ。どうやら、もう一秒たりとも待てなかったらしい。
「……泣かせて、ごめん」
「……泣いて、ごめんね」
わたしの首元に顔を埋めて、そこで大きく深呼吸する彼が可愛くて。……ほんの少しだけ、くすぐったくて。
小さく笑えば「どうしたの?」って音。それには「なんでもない」と音で返して。代わりに背中に腕を回した。わたしも……わたしで、上書きしたかったから。
どうやらわたしは、ヒナタくんのヤキモチにより泣かされたらしい。珍しく嫉妬を剥き出しわたしに妬かれたのが嬉しくて、もう少し見たいなーと思っていたらやりすぎた……と。
「ちょっと、……いや相当腹立って。なんでツバサの匂いつけてんだって」
「それは……まあ、かくかくしかじか」



