すべての花へそして君へ②


「……こすったら目、腫れるよ」

「っ……」


 トントンと。はめた猫の耳に触れた彼は、優しい笑顔に少しだけ、申し訳なさを交えていた。


「ごめん。泣かせるつもりは本当になくて……って、結果泣かせたんだから同じようなもんだけど」


 そのまますっと、目元の涙を拭おうと伸びてくる手に、自分でもびっくりするほど体が大きく震えてしまった。


「……っと」

「あっ。……こ、れは。ちが、くて」

「んー、誓ってオレからは触ってないんだけど、もし気になるようなら手とか洗ってこようか? 血だらけになるくらいまで束子で擦ってくるけど」

「そ、そんなことはしなくても……」

「だったら、どうやったらあんたに触れられる? 触らしてくれる?」

「……えっ」

「一刻も早く、あんたに触れて抱きしめてキスしたいんだけど、どうしたらいい? 何したらいい?」

「えっ。えっ?」


 頭が追いつかなかった。


「……だったら脱がす? さっきしたみたいに」

「……え」

「じゃあ脱がして。あおいが」

「え……っ!」

「脱がせ」

「は、はいっ」


 そして、どうやら拒否権はないらしい。
 震える手を伸ばして、まずはネクタイをスルスルと外す。布が擦れる音が、妙に妙に耳についた。……静かに、喉が鳴った。


「あーにゃんのエッチ。今何考えたの」

「……! な、何も。考えては……」


 そんなに顔に出ていたのだろうかと。慌てて俯きながら、ぷつんぷつんと襟元からシャツのボタンを外していく。


「っ、……自分だけ触るんだ。ズルいね」


 見えた首筋から鎖骨にかけての綺麗なラインに、つい手が伸びた。
 でも、泣きすぎてぼーっとしている頭は相当おかしくなっていたらしく、それだけでは終わらなかった。


「……えっ。ちょ、んっ」


 気付けば、そこに唇を寄せていた。……気付けば、鎖骨のところに、赤い花を咲かせていた。


「……あーにゃん大胆」

「ごっ、ごめ」

「なんで謝るの」

「だ、……って。勝手に……」


 Tシャツの襟元から、ほんの少し見えてしまっている。……今思えば、なんてことをしてしまったんだわたしはわわわ。


「ふはっ」

「なっ、何がおかしいの……」

「ん? だいぶ落ち着いたのかなって。調子戻ってきたなーと思って」

「……すみません。いろいろ取り乱して」

「オレ愛されてんなーって。嬉しくて笑ってた」

「……えっ?」