「……こすったら目、腫れるよ」
「っ……」
トントンと。はめた猫の耳に触れた彼は、優しい笑顔に少しだけ、申し訳なさを交えていた。
「ごめん。泣かせるつもりは本当になくて……って、結果泣かせたんだから同じようなもんだけど」
そのまますっと、目元の涙を拭おうと伸びてくる手に、自分でもびっくりするほど体が大きく震えてしまった。
「……っと」
「あっ。……こ、れは。ちが、くて」
「んー、誓ってオレからは触ってないんだけど、もし気になるようなら手とか洗ってこようか? 血だらけになるくらいまで束子で擦ってくるけど」
「そ、そんなことはしなくても……」
「だったら、どうやったらあんたに触れられる? 触らしてくれる?」
「……えっ」
「一刻も早く、あんたに触れて抱きしめてキスしたいんだけど、どうしたらいい? 何したらいい?」
「えっ。えっ?」
頭が追いつかなかった。
「……だったら脱がす? さっきしたみたいに」
「……え」
「じゃあ脱がして。あおいが」
「え……っ!」
「脱がせ」
「は、はいっ」
そして、どうやら拒否権はないらしい。
震える手を伸ばして、まずはネクタイをスルスルと外す。布が擦れる音が、妙に妙に耳についた。……静かに、喉が鳴った。
「あーにゃんのエッチ。今何考えたの」
「……! な、何も。考えては……」
そんなに顔に出ていたのだろうかと。慌てて俯きながら、ぷつんぷつんと襟元からシャツのボタンを外していく。
「っ、……自分だけ触るんだ。ズルいね」
見えた首筋から鎖骨にかけての綺麗なラインに、つい手が伸びた。
でも、泣きすぎてぼーっとしている頭は相当おかしくなっていたらしく、それだけでは終わらなかった。
「……えっ。ちょ、んっ」
気付けば、そこに唇を寄せていた。……気付けば、鎖骨のところに、赤い花を咲かせていた。
「……あーにゃん大胆」
「ごっ、ごめ」
「なんで謝るの」
「だ、……って。勝手に……」
Tシャツの襟元から、ほんの少し見えてしまっている。……今思えば、なんてことをしてしまったんだわたしはわわわ。
「ふはっ」
「なっ、何がおかしいの……」
「ん? だいぶ落ち着いたのかなって。調子戻ってきたなーと思って」
「……すみません。いろいろ取り乱して」
「オレ愛されてんなーって。嬉しくて笑ってた」
「……えっ?」



