「あれは抱き合ってたとは言わないの。勝手に抱きつかれたって言うの。わかった?」
「はっ、はい……」
確かに、思い出した場面は、彼が言ったとおり抱き合ってはいなかった。
「どう見たって頭抱えてたでしょ。途方に暮れてたでしょオレ。なんでそんな風に思ったの」
「……から」
「え?」
「さっきの子……が、すごい嬉しそうに。笑ってた、から……」
「だからそう見えたって言うの、知らないよそんなの。勝手に抱きついて、勝手に喜んでただけなんじゃないの」
「でもっ、抱きつかれてたのは本当でしょう……っ!?」
そう口にしてしまったらもう、本当に止まらなかった。
「本当に困ってたんなら引き剥がしてでも離れればよかったじゃん。ヒナタくんなら女の子引き剥がすぐらい簡単でしょ、得意でしょう!?」
「え。……そんな風に思われるようなことしたっけ。記憶ないんだけど」
「それなのにそうしなかったっ。嫌じゃなかったんでしょ、だからそうしなかったんでしょ、だから匂いが移るくらいまで抱きつかれたままだったんでしょう!?」
「に、……匂い?」
「こっちはずっとそのことでモヤモヤしてるのにっ、ヒナタくんはずっとニヤニヤしてるし」
「……え。か、関係ある? それ……」
……なんで。
「……なんで、ほかの子はヒナタくんにさわれるの」
「……あおい」
「わたしは、……ひなたくんにさわりたいのがまんしてがまんして。……ずーっとさみしいのがまんしてるのに」
「…………」
「っ、ひなたくんの彼女はっ、わたしなのに……っ!」
落ち着いていた涙は言うたびにドバーッとあふれ、言い切ったらついに涙腺ごと爆発。今まで溜めに溜めた感情を叫びとともに吐き出すと、軽く目眩に襲われた。
それでもわたしは、傾きそうになる体を支えようと伸びてくるやさしい手を再度拒絶した。どうしても、受け取れなかった。
「……大丈夫?」
「……だから、いいたくなかったのにっ」
「え?」
「こんな、ひどいこと……。……こんなふう、に。いうつもりなんて……。ひっく」
もう、何もかもぐっちゃぐちゃだった。
今まで感じていた寂しさも。ついさっきあふれてきた妬みも。……ちゃんと、言おうと思ってたのに。
なんで、こんな風になっちゃったんだろう……。



