けれど、口から出した瞬間、酷く後悔した。
本当に嫉妬で気が狂ってしまっているわたしに。グルグルと掻き乱していくそれに、吐き気まで感じているわたしに。目の前の彼が、驚きで目を瞠っていたから。
「……ごめん。何でもない。ちょっとお手洗いに行ってくる」
けれど彼は、愚かな口を塞ごうとした手を取り、この場から逃げようとするのを許さなかった。
「ちょ。……ヒナタくんやめ、……離して」
「やだ」
「……じゃあ、お願いだから見ないで」
「それもやだ」
加えて頬に添えられていた手は、耳の下の方で顔を上に向かせようとしてくる。
気持ちの悪い感情に押し潰され、涙で視界が滲む。……だから、なのだろうか。
「他には? 他に訊きたいことはないの?」
そんな嫌がるわたしの目に映った彼は、なぜか嬉しそうに優しい笑みを浮かべていたんだ。
「……っと。さすがにちょっと虐めすぎたか」
どれくらいそうしていたか。口を一文字に結んでいろいろ堪えていたわたしの耳に、小さな呟きが届いた。
「……ごめん。つい――っ」
彼はおかしそうに笑いながら、掴んでいた腕をくいっと引っ張り、するりと頭の後ろへ手を回して引き寄せようとしてくる。
けれどその瞬間、わたしは手を腕を……彼を、拒絶していた。
「……あおい? どうし」
「……わらないで」
「え……?」
「あの子に触った手で触らないで……!」
そして気付けば、そう叫んでいた。
こんなことを言いに、ヒナタくんに会いに来たわけじゃないのに。
「やだっ。はなして!!」
「絶対やだ。死んでも離さない」
それが酷く惨めに思えて、そのままここから逃げようと思ったのに。すんでの所で、やっぱり彼には捕まってしまった。
「……ぅっ。くうぅ……。……ひっく」
「本当にオレに触られたくなかったら、本気で嫌がって。本気で逃げて」
優しい言葉とは声とは裏腹に、ぎりりと軋む音さえ聞こえそうなほどの腕を掴む力が、痛いのに、安心というどこか心地よさを感じさせる。
けれど、一度爆発した思いは、簡単には止められなかった。堰を切ったように、言葉の代わりに涙がこぼれ落ちていく。
「あおい、ほんとごめん。ほんとやりすぎた」
「だからこっち向いて」と伸ばしてくる手を、やっぱり条件反射で叩いていた。そのまま、拒むように顔を隠した。
「……あおい、一回落ち着いてオレの話を」
「や、だっ」
「大丈夫。大丈夫だから、一回こっち向いて」
「やだっ」
「あおい……」
「い、ま。なにか……いったら……っ」
「え……?」
「ひどいことっ、しか……。っ。いえな……。いいたく。な……っ」



