すべての花へそして君へ②


「あーにゃんの完成」


 顔を上げるとパシャリ。為て遣ったりと言いたげな顔で、彼は撮った写真を見せてくる。……あ、あーにゃん。


「はい。あーにゃん笑って?」

「わ、笑って……って」


 頑張って笑ってみるけど、「うわひっど。すごい引き攣ってるよ」と見せてもらった写真は、それはもう酷い顔をしていた。
 ……こんな顔、してたのか。それは心配かけるに決まってる。


「あーにゃんは本当はオレに会いに来たんでしょ? 猫らしくにゃーって言って」

「え……」


「ほら、早く」と待ち構えている彼は、ばっちりカメラも準備万端。
 ……普段、チカくんはこんな気持ちなんだな。猫さんについての要望は、今後いろいろ見直さなければいけないかもしれない。


「……にゃ、にゃー」

「……え。どっち? はい? いいえ?」

「い、イエスの方」

「……にゃーはいいや。わかんないから」


 ……完全に言い損じゃない??
 けれど、肯定してしまったことは間違いなかった。


「あんたのことだから、邪魔しちゃ不味いと思ってたんでしょ」

「……あっ。ヒナタくんシフトは!?」

「大丈夫。レンが替わりに入ってくれてる」

「……そ、そっか」


 彼の、見つめてくる瞳が少し、熱っぽい気がした。
 それが、妙に気恥ずかしくて。逃げるように俯けば、その拍子に流れた髪の一束を、彼はそっと手で掬う。


「知らないでしょ。そこの扉からあんたが来たとき、オレがどれだけ嬉しかったか」

「……えっ」


 そして、その掬った髪へ。彼は静かに、唇を寄せた。


「嬉しかった……って」

「それを答える前に。オレに訊きたいこと、あるんじゃないの」


 彼の指から、するりと髪の一束が落ちた。髪を撫で付けるように頭から頬に、手が添えられたから。


「……あ、あの」

「ん?」


 熱っぽい瞳は、わずかに好奇心の色が見え隠れしている。


「……どう、して。レンくんと替わったのかな、って」

「それは、オレがここにいたからじゃない?」

「……どうして。ここにいたのかな、って……」

「呼ばれたからね」

「どうして……呼ばれたのかな、って」

「『足りない材料一緒に取りに来て欲しい』って、表向きはそうだったかな」


 消え入りそうな声は、羞恥心からなのか。上手く呼吸ができないのは、緊張からなのか。尋常じゃないほどバクバクと脈打つのは、久しく触れていなかった彼の体温に、喜びを感じているからなのか。


「どう、して……っ」

「ん?」


 口を開くたび、その端まで彼の指が頬を滑るように撫でる。まるで、もっと聞きたいと。もっと教えて欲しいと。せがまれているようだ。
 逸らせない。囚われてしまった。……もう、逃げられない。


「どうしてっ。だき、あってたの……」