「あーにゃんの完成」
顔を上げるとパシャリ。為て遣ったりと言いたげな顔で、彼は撮った写真を見せてくる。……あ、あーにゃん。
「はい。あーにゃん笑って?」
「わ、笑って……って」
頑張って笑ってみるけど、「うわひっど。すごい引き攣ってるよ」と見せてもらった写真は、それはもう酷い顔をしていた。
……こんな顔、してたのか。それは心配かけるに決まってる。
「あーにゃんは本当はオレに会いに来たんでしょ? 猫らしくにゃーって言って」
「え……」
「ほら、早く」と待ち構えている彼は、ばっちりカメラも準備万端。
……普段、チカくんはこんな気持ちなんだな。猫さんについての要望は、今後いろいろ見直さなければいけないかもしれない。
「……にゃ、にゃー」
「……え。どっち? はい? いいえ?」
「い、イエスの方」
「……にゃーはいいや。わかんないから」
……完全に言い損じゃない??
けれど、肯定してしまったことは間違いなかった。
「あんたのことだから、邪魔しちゃ不味いと思ってたんでしょ」
「……あっ。ヒナタくんシフトは!?」
「大丈夫。レンが替わりに入ってくれてる」
「……そ、そっか」
彼の、見つめてくる瞳が少し、熱っぽい気がした。
それが、妙に気恥ずかしくて。逃げるように俯けば、その拍子に流れた髪の一束を、彼はそっと手で掬う。
「知らないでしょ。そこの扉からあんたが来たとき、オレがどれだけ嬉しかったか」
「……えっ」
そして、その掬った髪へ。彼は静かに、唇を寄せた。
「嬉しかった……って」
「それを答える前に。オレに訊きたいこと、あるんじゃないの」
彼の指から、するりと髪の一束が落ちた。髪を撫で付けるように頭から頬に、手が添えられたから。
「……あ、あの」
「ん?」
熱っぽい瞳は、わずかに好奇心の色が見え隠れしている。
「……どう、して。レンくんと替わったのかな、って」
「それは、オレがここにいたからじゃない?」
「……どうして。ここにいたのかな、って……」
「呼ばれたからね」
「どうして……呼ばれたのかな、って」
「『足りない材料一緒に取りに来て欲しい』って、表向きはそうだったかな」
消え入りそうな声は、羞恥心からなのか。上手く呼吸ができないのは、緊張からなのか。尋常じゃないほどバクバクと脈打つのは、久しく触れていなかった彼の体温に、喜びを感じているからなのか。
「どう、して……っ」
「ん?」
口を開くたび、その端まで彼の指が頬を滑るように撫でる。まるで、もっと聞きたいと。もっと教えて欲しいと。せがまれているようだ。
逸らせない。囚われてしまった。……もう、逃げられない。
「どうしてっ。だき、あってたの……」



