「あんたがバカなのは、今に始まったことじゃないでしょ」
そんな声と同時に、バサッ――と。半ば投げ付けるように、頭に何かが覆い被さってきた。……大好きな、おひさまの匂いがした。
「……ひな」
「そんな顔して、オレが本気で放っておくとでも思ったの」
「そんな、って……」
「気になってしょうがないですーって。嫉妬で狂ったような顔」
「そっ、そんな顔してない」
「してるよ。最近のあんたは感情がすぐ表に出る」
見上げたそこにいた彼は、顰めっ面でこちらを真っ直ぐ見下ろしていた。少し、怒っているようだった。
「……あ、あの」
「一刻も早くそれ着て。そのブラウス脱いでから」
「えっ……?」
「3秒以内に着ないとオレが脱がす」
「ええっ!?」
そして、3秒すら待てなかったらしいヒナタくんは、未だ眉根を寄せたまま、リボンと襟元のボタンを外し始めた。この間およそ0.5秒。
「ちょっ!? ひ、ヒナタくん……!?」
そして、わたしの制止も虚しく。あっという間にブラウスを剥ぎ取られキャミソール姿に。
彼には全部見られているのだ。今更隠したところで何になるんだとちょっと思ったけど、なんだか無性に恥ずかしくて腕で隠した。
「襲われたくなかったら3秒以内にそれ着て」
「――!?」
そうしたすぐそばからそんなことを言われたので、慌てて彼が持ってきたジャージを着た。さすがに、こんなところで襲われでもしたらたまったもんじゃない。
そしてヒナタくんは、剥ぎ取ったブラウスをバッサバッサと煽いでいる。……ど、どうした?
「ねえ」
「は、はい」
「このブラウス捨ててい? ていうか捨てるから。燃やすから」
「ええっ!? ちょ、ちょっとそれは困る」
「なんで」
「いや、わたしブラウス二枚しか持ってないから。他に洗い替えないから」
「それくらいオレが買ってあげる」
「……いえ、それくらい自分で買いますけど」
一体彼はどうしたというのだろうか。
おかしい。さっきから言動がものすごくおかしい。目の敵のように、剥ぎ取ったわたしのブラウスを睨んでいる。
「取り敢えずリボンは返す」
「……どうも」
取り敢えず、あのブラウスは念入りに洗おう。川へ洗濯しに行こう。
「それで? 何改まってバカだなんて言ってたの。もしかしてやっと自覚したの」
前の席に座った彼は、椅子を跨いで窓側の壁に体を預けながら何ともまあ失礼なことを言っている。
……いいえ。いいんです別に。彼のおっしゃることはすべて正しい……。
「……ん?」
俯いていると、何かが頭にカポッと填められた。
……あれ。わたし、耳が生えてる。



