「お、お邪魔しちゃったね。どーぞどーぞ、あとはお若いもの同士……」
「あっ、だ、大丈夫です! もう終わったので……!」
中の現状を見て、わたしはそう思いました。そして、いろいろ悟りました。
けれど、ヒナタくんと一緒にいた女の子は慌てた様子でそう言って。
「それじゃ九条くん。……また明日」
「気が向いたらね」
ひと言ふた言ヒナタくんと会話をしたゆるふわパーマの可愛いらしい子は、なぜか喜びを噛み締めるような表情で教室から出て行った。……彼女にぴったりの、甘い香りがした。
「……なんでそんなむすっとしてんの。あ、もしかしてヤキモ――」
「なんでひーにゃんじゃないの」
「……いや、そもそもひーにゃんとは何ぞや」
「耳と尻尾……」
「オレ裏方。調理担当」
非常に残念……。
「……それで? オレ捜しに来たんじゃないの?」
と、ヒナタくんは入り口の方で首を傾げている。
そうなるのも無理はない。なぜなら、そんな彼の脇を擦り抜けて、今わたしは窓側の席を拝借しているのだから。
「違います。わたしはひーにゃんを捜しに来ただけであって、ヒナタくんは捜していません」
「……本当に?」
「はい」
「……だったら、クラスに戻るけど……」と、訝しげな彼ににっこりと笑顔を向けて手を振った。
「裏方さん頑張ってね」
「……ん。ありがと」
同じように手を振ってくれた彼は、優しい笑みを残して静かに教室を出て行った。
「……何が、頑張ってだ」
誰もいなくなった教室で一人、机に突っ伏した。
外は、楽しそうな声でいっぱいだった。でも、とてもそんな気分にはなれそうにない。
あんなものを、見せられてしまっては。……とても、平静は保てない。
「……別に、ヤキモチなんかじゃない」
なんで、こんなところに二人でいたんだとか。なんで、さっきの子は嬉しそうにしてたんだとか。なんで、ヒナタくんから甘い匂いがするのかとか。
「……なにがひーにゃんだ」
なんで、抱き合ってたのかとか。そんなのは別に、関係ないんだ。
「だって、そんなの疑ってるようなものじゃん」
だからこれは、ヤキモチじゃない。嫉妬なんかじゃ……ない。
「……わたしの、ばか」
やっぱり、5分は保たなかった。



