すべての花へそして君へ②


「お、お邪魔しちゃったね。どーぞどーぞ、あとはお若いもの同士……」

「あっ、だ、大丈夫です! もう終わったので……!」


 中の現状を見て、わたしはそう思いました。そして、いろいろ悟りました。
 けれど、ヒナタくんと一緒にいた女の子は慌てた様子でそう言って。


「それじゃ九条くん。……また明日」

「気が向いたらね」


 ひと言ふた言ヒナタくんと会話をしたゆるふわパーマの可愛いらしい子は、なぜか喜びを噛み締めるような表情で教室から出て行った。……彼女にぴったりの、甘い香りがした。


「……なんでそんなむすっとしてんの。あ、もしかしてヤキモ――」

「なんでひーにゃんじゃないの」

「……いや、そもそもひーにゃんとは何ぞや」

「耳と尻尾……」

「オレ裏方。調理担当」


 非常に残念……。


「……それで? オレ捜しに来たんじゃないの?」


 と、ヒナタくんは入り口の方で首を傾げている。
 そうなるのも無理はない。なぜなら、そんな彼の脇を擦り抜けて、今わたしは窓側の席を拝借しているのだから。


「違います。わたしはひーにゃんを捜しに来ただけであって、ヒナタくんは捜していません」

「……本当に?」

「はい」


「……だったら、クラスに戻るけど……」と、訝しげな彼ににっこりと笑顔を向けて手を振った。


「裏方さん頑張ってね」

「……ん。ありがと」


 同じように手を振ってくれた彼は、優しい笑みを残して静かに教室を出て行った。


「……何が、頑張ってだ」


 誰もいなくなった教室で一人、机に突っ伏した。
 外は、楽しそうな声でいっぱいだった。でも、とてもそんな気分にはなれそうにない。

 あんなものを、見せられてしまっては。……とても、平静は保てない。


「……別に、ヤキモチなんかじゃない」


 なんで、こんなところに二人でいたんだとか。なんで、さっきの子は嬉しそうにしてたんだとか。なんで、ヒナタくんから甘い匂いがするのかとか。


「……なにがひーにゃんだ」


 なんで、抱き合ってたのかとか。そんなのは別に、関係ないんだ。


「だって、そんなの疑ってるようなものじゃん」


 だからこれは、ヤキモチじゃない。嫉妬なんかじゃ……ない。


「……わたしの、ばか」


 やっぱり、5分は保たなかった。