代わりに紡いだ言葉は、嬉しそうな彼の声に、あっという間にかき消されていった。
いや、ていうか今言ったしねあなた。本当に怖いと思ってんのか……? 疑ってしまいたくもなるさ。
「……つ、つばさくん何してるんですか……」
「ん? ……手握ってる」
「いや、それは見てればわかる。わたしが言ってるのは」
「お前手ちいせえな。ま、身長が身長だからな。胸はデケえけど」
「おいこら。今のはセクハラ発言」
「違いますー。怖くて言えなかったことですー」
だって、なんだか楽しそうに言葉どおり手を握って遊んでるんだもの。何が楽しいんだか知らないけど。
「ねえツバサくん」
「今、喜びを噛み締め中なんだよ」
「え?」
「そんでもって、変なこと口走った反省中」
「……ふふっ。なにそれ」
「それと、今お前の中から悪いもの吸い取ってる」
するとにぎにぎと動かしていた手が止まり、ただじっと。ぎゅっと。握られるだけに変わる。
「……悪いもの?」
「そう。悪いもの」
そう言うと彼は、もう片方の手もくれとせがんできた。決して嫌なわけではないので、そのままそっと、彼に預ける。
「人と心は繋がってるんだ。触れ合ったところから、その人の気持ちがわかったりする」
「えっ」
「……おい、なんで反射的に今手引こうとしたんだよ」
「だ、……って。怖いこと、言うから」
「全部わかるわけじゃない。というか、感覚的にってだけでさすがに何考えてるのかとかまではわかんねえよ」
「そういうのはさすがに無理だって」と、ふっと優しい笑みを浮かべて、彼は再びわたしの手元へと視線を落とした。
「まあ、お前の場合は全面的に出てきてるから、感覚もクソもねえけど」
「じゃ、じゃあこれには一体何の意味が……」
「言ったろ? 吸い取ってるって。いろいろ、お前は抱え込みすぎなんだよ」
ぐっと握った手に力を込めて。彼は、立てた片膝に頬を置いて、そっと目蓋を下ろした。
「俺はな、前回のことで学習したんだ」
「……それ、さっきも聞きました」
「結局お前は、俺を頼ってくれねえんだって」
「そんなことないよ」
「だから。お前が嫌がっても、俺の方から違った形でなんとかしてやらないとって。そういう結論に至ったわけだ」
「……つばさくん」
嬉しいのに、寂しくて。感謝してるのに、申し訳なくて。
そんなごちゃごちゃの気持ちも全てわかっているように、彼はまたグッと繋いだ手に力を込めた。
「ちっせえ体でそんな抱え込んだら、いつかパンクするぞ。というかパンクしそうだ、今すでに」
「ふふ。……君には、そんなにわたしが柔に見えるのかい?」
「ああ、見えるよ。あいつのことに関しては特に」



