向けられた背中をウリウリ~と突いて遊べば、彼は反撃する気も起きないのか、いろんな意味で悲鳴を上げていた。
人の受け売りで、しばらくそのまま弄って遊ぶのも楽しいけれど。わたしは、そんな彼の背中をぽんと押した。
「……アオイちゃん?」
「男の子だからじゃ、ないよ」
「え……?」
「女の子だってね、一緒なんだよ」
出てきた声は、自分でも驚くほど頼りなさげなものだった。けれどそれを一瞬で払拭するように、起き上がって今一度カナデくんの名前を呼ぶ。
「体育祭のスローガン。この間会ったときにね、ユズちゃんにも見せてあげたんだよ」
「……え」
「そうしたらね、すごいねって言ってたよ。本当にかなくんが書いたの? って、驚いてた」
それからじーっとそれを見たあとに、ふっと嬉しそうな顔して笑ったんだ。
「『本当だ。全部の文字に、かなくんらしい優しさがいっぱい溢れてるね』……って」
「……」
「『さすがかなくんだね! あたしが惚れただけのことはある!』って!」
「わっ! ……っと。……アオイちゃん?」
黙りこくってる彼の体を引っ張り起こして。その勢いのまま、とん――っとステージの上から突き落とす。
「あのね? 甘えたくっても、どうやったって甘えられないことだってあるの」
「……うん」
「器用に生きられない女の子だっている。甘え方なんて知らない、大丈夫だからって、強がっちゃう子もいるんだよ」
「そうだね」
「返事がないなら、連絡が取れないなら、直接会って聞けばいいんだよ」
「その通りだ」
ふっと、嬉しそうな顔で見上げてくる彼に、わたしも笑顔で返した。
今の君なら、きっと――大丈夫だ。
彼のすぐ横へと下りて、そのまま背中を押しながらシュッシュッポッポーシュッシュッポッポー!
「あ、アオイちゃんっ?」
「思い立ったが吉日! 善は急げだカナデくん!」
そのまま、講堂の出入り口へごあんな~い。
そして、着いて早々再び出入り口で突き飛ばした――「わあ!!」……ら、どこかに躓いてしまったらしく、カナデくんは顔面からすっころんだ。
「次はいい結果期待してるよ~ん」
「ちょっと待って!? 今のこの状態に【心配】のふた文字は無し!?」
「うんうん。元気そうで何より何より」
「……いつにもましてアオイちゃんがおかしくなってる」
ちょっとー。聞こえてるよ地獄耳なんだから。いつにもましてって。どういう意味だね。



