「……葵?」
「アオイちゃん? どうかした?」
ステージの外へだらりと足を投げ出して、ごろんと後ろへ寝っ転がる。見上げたそこにはひとつ、ぽつんと優しい灯りが点っていた。
……あれ。そういえばわたし、いつの間に照明なんか点けたんだろう。
「……もしかして俺、邪魔しちゃった……?」
記憶を巡らせていると、同じくごろりと横になった彼が、なぜか申し訳なさそうに顔を歪ませた。
「ん? 邪魔とは?」
「俺とお前がイチャついてたからだろ」
「いやいや、いつイチャついたの」
「ついさっきイチャついてたよ」
「えっ!? 嘘!!」
「んーまあ、見る人が見たらそう思うかな?」
けど、と。そういう意味じゃなくてね? ……と。今度は心配そうな顔でこちらを向く。
「……ツバサと、こんなところに二人でいたから」
こちらの様子を窺うように。ほんの少し、寂しそうに笑いながら。
でも、決して――目を逸らさずに。
「……ねえ、カナデくん」
幾度か開きかけた唇からやっと出た声は、わずかに掠れていた。それがなんだかすごくおかしく思えて、思わず小さく笑みがこぼれる。
「それくらいの勢いでユズちゃんに聞いてみたらいいんじゃないかな?」
「そ、それができたら苦労してないよ……」
ニヤニヤと。そう意地悪してみれば、彼は頭を抱えるように顔を手で覆い隠した。
好きな人だからこそ、きっと聞くのが怖いんだろう。……わたしと、一緒だね。
「カナデくんはさ、いつもどんなこと考えてる?」
「え。……唐突だね」
「何でもいいんだよ。授業中とかご飯食べてるときとか。それこそ、作品を作っているときとかさ」
「……考えてること、かー」
少し考えたあと、彼は慌てて再び自分の顔を手で覆った。恐らく、さっきとは全く違う意味で。
「と、……トッテモ下ラナイコトデス」
「……カナデくん」
「な、なに」
「ビックリするぐらい耳真っ赤だよ」
「……!? み、見ないで」
「もう見えちゃった」
慌ててそこを隠そうとしても、やっぱりすべては隠しきれなくて。恥ずかしそうにしている彼に、ついつい悪戯心が芽生える。
「ユズちゃんも今頃授業受けてるのかな、とか」
「えっ」
「ユズちゃんも今頃ご飯食べてるのかな? 今日のご飯は何だったんだろーとか」
「えっ……!」
「作品作りに集中したいのにユズちゃんのことで頭がいっぱいだよー……とか」
「ええっ!?」
わーわーと叫びながらくるり背を向けた彼に、さらに追い討ちをかける。
「やっぱり寂しいよねー会いたいよねー。でも強がっちゃうんだよねー。かわいーねーカナデくんっ」
「やーめーてえー」
「だから、寂しいから相談しに来たんだもんねー。ユズちゃんに会いたいよねー。そんでもっていっぱい甘えちゃったりしたいよねー」
「わああー! アオイちゃんもう勘弁してー……!」



