すべての花へそして君へ②


「正直言って、ここまでされる理由がわからない」

「だから、何か知ってるかと思って葵に相談したんだろ」

「ん。そう」


 何か――確かにわたしは、それを知っている。でも、それを、わたしは言ってはいけない。言えば、解決するものだとしても。彼の彼女の苦しみが、少しでもなくなるとしても。

 わたしは、言えない。約束したから。


「……あ。もしもしユズちゃん?」


 だから、きっと今できるのはこれだけだ。


「ユズちゃん明日部活があるんだって。でも早く終わったら時間とれるから、もしかしたら劇間に合うかもしれないって」


 通話終了のボタンを押して隣に声をかけると、明らかにカナデくんは落ち込んだ様子で膝を抱えていた。


「……アオイちゃんの電話には出る……」

「電話も出てくれない?」

「ん。何回かかけてたら着拒になった」

「こりゃ重症だな」


 決して、カナデくんがではない。それはもちろん、彼もわかっている。


「……アオイちゃん」

「ん?」

「言ってくれないのには、わけがあるのかな」

「わたしが黙っていられるような性格に見えるのかい?」

「だよね。……何に、悩んでるのかな。困ってるのかな」

「カナデくん……」

「力に……なりたいのに、それさえもさせてもらえないんじゃ、どうすればいいのか」

「諦めんの」

「え」

「だから、連絡取れないくらいで諦めんのかって聞いてんだよ」


 時々、やっぱり男の子ってすごいなって。改めて思い知らされることがある。
 さぞ当たり前のように。それがどうしたとあっけらかんに。


「……諦めるわけねえだろ」


 たったひと言で、彼の顔付きはがらりと変わった。


「……ねえ、カナデくん」


 つい、いろいろ言ってしまうわたしでは、そんな風に彼の背中を押してあげることはできなかっただろう。


「ツバサくん、いてよかったでしょう?」

「ものすごい自慢気だね、アオイちゃん」

「だって、ツバサくんは自慢のお抱え相談屋さんだもの」

「……そうなの?」

「初めて聞いた」


 わからないことって、やっぱりどうしてもあるんだ。もちろん、女のわたしでもわかることはある。
 けれど、男の子同士だからこそ、わかるものがある。

 言って欲しい言葉は何か。焚き付けて欲しい思いは何か。お互いの……考えていることは何か。


「……いいなあ」


 わたしも……男の子だったら、よかったのかな。