「正直言って、ここまでされる理由がわからない」
「だから、何か知ってるかと思って葵に相談したんだろ」
「ん。そう」
何か――確かにわたしは、それを知っている。でも、それを、わたしは言ってはいけない。言えば、解決するものだとしても。彼の彼女の苦しみが、少しでもなくなるとしても。
わたしは、言えない。約束したから。
「……あ。もしもしユズちゃん?」
だから、きっと今できるのはこれだけだ。
「ユズちゃん明日部活があるんだって。でも早く終わったら時間とれるから、もしかしたら劇間に合うかもしれないって」
通話終了のボタンを押して隣に声をかけると、明らかにカナデくんは落ち込んだ様子で膝を抱えていた。
「……アオイちゃんの電話には出る……」
「電話も出てくれない?」
「ん。何回かかけてたら着拒になった」
「こりゃ重症だな」
決して、カナデくんがではない。それはもちろん、彼もわかっている。
「……アオイちゃん」
「ん?」
「言ってくれないのには、わけがあるのかな」
「わたしが黙っていられるような性格に見えるのかい?」
「だよね。……何に、悩んでるのかな。困ってるのかな」
「カナデくん……」
「力に……なりたいのに、それさえもさせてもらえないんじゃ、どうすればいいのか」
「諦めんの」
「え」
「だから、連絡取れないくらいで諦めんのかって聞いてんだよ」
時々、やっぱり男の子ってすごいなって。改めて思い知らされることがある。
さぞ当たり前のように。それがどうしたとあっけらかんに。
「……諦めるわけねえだろ」
たったひと言で、彼の顔付きはがらりと変わった。
「……ねえ、カナデくん」
つい、いろいろ言ってしまうわたしでは、そんな風に彼の背中を押してあげることはできなかっただろう。
「ツバサくん、いてよかったでしょう?」
「ものすごい自慢気だね、アオイちゃん」
「だって、ツバサくんは自慢のお抱え相談屋さんだもの」
「……そうなの?」
「初めて聞いた」
わからないことって、やっぱりどうしてもあるんだ。もちろん、女のわたしでもわかることはある。
けれど、男の子同士だからこそ、わかるものがある。
言って欲しい言葉は何か。焚き付けて欲しい思いは何か。お互いの……考えていることは何か。
「……いいなあ」
わたしも……男の子だったら、よかったのかな。



