『なので、もう計算はやめてしまいましょ~』
グシャグシャグシャ……! ポ~イッ!
今まで計算してきた数々と、聞き出したであろう情報をゴミ箱へ! ……よしっ。ナイスシュートだぜ!
『あ、アオイちゃん!?』
『あおいさん、それはさすがに……』
『完全に皆さんのお仕事の邪魔ではあ?』
『さすが葵』
『皇さん、褒められることでは……』
『……はあ。それで?』
ヒナタくんだけは、呆れながら頭をポリポリと掻きながらそう聞いてくる。……ふふっ。さすがでござん――
『ポーズ決めなくていいからさっさと教えて』
『……ハイ』
顎に置いてた指二本を外され、しょぼ~ん。
『……えーっと。なので、さっきも言いましたが、“そこまで”ドライブして欲しいんです!』
『そこまでって……』
『決して、目的がなくて言ってるわけではないんです』
『……? と、いうと?』
そっと目を伏せ、小さく息を吐く。
『……モミジさんはわたしに憑く時、名字を依り代にしたと仰っていました』
名字はきっと、一種の縛りだっただけで、結局彼女は“わたし”という依り代が無ければ動けなかった。……ということはだ。
『彼女には恐らく“依り代”が必要だった』
その言葉の意味に。これから言うであろうわたしの言葉に。この場の全員、予想がついたようだ。
『わたしが道案内します』
『……アオイちゃん』
『どうですか? 計算上に頼るのももちろん大事なことですが、行き詰まったなら、気分転換にちょっとそこまでドライブにでも?』
彼らは、お互いの顔を見合ったあとゆっくり頷いてくれた。
『よかった。……それじゃあ、行きましょう』
わたしが海に落ちた場所。彼女に救ってもらった場所へ。



