すべての花へそして君へ②


『なので、もう計算はやめてしまいましょ~』


 グシャグシャグシャ……! ポ~イッ!
 今まで計算してきた数々と、聞き出したであろう情報をゴミ箱へ! ……よしっ。ナイスシュートだぜ!


『あ、アオイちゃん!?』

『あおいさん、それはさすがに……』

『完全に皆さんのお仕事の邪魔ではあ?』

『さすが葵』

『皇さん、褒められることでは……』

『……はあ。それで?』


 ヒナタくんだけは、呆れながら頭をポリポリと掻きながらそう聞いてくる。……ふふっ。さすがでござん――


『ポーズ決めなくていいからさっさと教えて』

『……ハイ』


 顎に置いてた指二本を外され、しょぼ~ん。


『……えーっと。なので、さっきも言いましたが、“そこまで”ドライブして欲しいんです!』

『そこまでって……』

『決して、目的がなくて言ってるわけではないんです』

『……? と、いうと?』


 そっと目を伏せ、小さく息を吐く。


『……モミジさんはわたしに憑く時、名字を依り代にしたと仰っていました』


 名字はきっと、一種の縛りだっただけで、結局彼女は“わたし”という依り代が無ければ動けなかった。……ということはだ。


『彼女には恐らく“依り代”が必要だった』


 その言葉の意味に。これから言うであろうわたしの言葉に。この場の全員、予想がついたようだ。


『わたしが道案内します』

『……アオイちゃん』

『どうですか? 計算上に頼るのももちろん大事なことですが、行き詰まったなら、気分転換にちょっとそこまでドライブにでも?』


 彼らは、お互いの顔を見合ったあとゆっくり頷いてくれた。


『よかった。……それじゃあ、行きましょう』


 わたしが海に落ちた場所。彼女に救ってもらった場所へ。