――――――…………
――――……
『ヒナタ、お前このあとは?』
『クラス行くよ。シフト入ってるから』
『お、マジか。頑張れ』
『チカも入ってたよ』
『うえっ!? マジか』
と、いうわけで、ヒナタくんはこのあとも忙しいらしい。今日はやっぱり難しそうだ。明日またチャレンジしてみることにした。
チカくんよ、聞いてくれてありがとう……と、感謝をしながらトホホと落ち込んでいると、「お疲れさん」と頭の上にぽんっと何かが乗っかった。
「ミルクティーだけど、好き?」
「好きー! もらっていいの?」
「いいから買ってきたんだよ」
「ありがとう!」
それを受け取ると、彼はわたしの隣に腰を掛けた。そしてカコッと音を立ててプルタブをつまみ、ブラックコーヒーの缶を空ける。
「……ん? どうしたんだよ」
「いやあ、大人だなあと」
「……飲んでみるか?」
「わかってるくせに」
ははっと声を上げて笑った彼は、「まあな」と小さくやさしく洩らす。ただ、それだけ。
缶を呷っては、両手で持ってぼうっと遠くを見つめて、また呷って。……本当にそれだけ。
「……おいしかった?」
「まだ残ってるぞ」
「わたしも、まだミルクティーがあるもん」
「口直しに一口とかどうよ」
「遠慮しとく」
じっと見ていることに気付いているのに、彼は座ってからわたしと目を合わそうとしなかった。
ただ、わたしの隣に座っているだけ。……コーヒーを飲みながら。それだけ。本当に……それだけ。
「つ……ツバサく」
まるで、我慢大会でもしているかのような気分だ。
けれど、とうとう耐えられなくなって声をかけようとしたそのとき、パタパタと遠くの方で足音が響いた気がした。もう講堂は出入りできないようになっているはずなのに。まだお客さんが残っていたのだろうか。
「アオイちゃーん! いたら返事してー!」
「……カナデくん?」
「そういえばさっき、葵の居場所聞いてきたっけ」
「え。何で教えてあげないの」
「いや、普通にど忘れしてた」
いやいや、そこは覚えてあげようよ。声を聞く限りかなり必死そうだよ?
「……いやいや、いるなら返事してよ。アオイちゃん」
「あ、ごめんカナデくん。ツバサくんに突っ込み入れててすっかり」
「……ツバサも、アオイちゃん見つけたなら教えてよ」
「悪い。すっかり忘れてた」
あ。なんだかカナデくんがものすごい悲しそうな顔に。慌てて用事を聞いてみた。
「……ここじゃ、ちょっと」
「……そうなの?」
「いや、ツバサが……」
「俺が聞いちゃ不味いこと……って、何するつもりだよお前」
「何もしないよ!? ただ相談を、……あっ」
「「相談??」」
――――……
『ヒナタ、お前このあとは?』
『クラス行くよ。シフト入ってるから』
『お、マジか。頑張れ』
『チカも入ってたよ』
『うえっ!? マジか』
と、いうわけで、ヒナタくんはこのあとも忙しいらしい。今日はやっぱり難しそうだ。明日またチャレンジしてみることにした。
チカくんよ、聞いてくれてありがとう……と、感謝をしながらトホホと落ち込んでいると、「お疲れさん」と頭の上にぽんっと何かが乗っかった。
「ミルクティーだけど、好き?」
「好きー! もらっていいの?」
「いいから買ってきたんだよ」
「ありがとう!」
それを受け取ると、彼はわたしの隣に腰を掛けた。そしてカコッと音を立ててプルタブをつまみ、ブラックコーヒーの缶を空ける。
「……ん? どうしたんだよ」
「いやあ、大人だなあと」
「……飲んでみるか?」
「わかってるくせに」
ははっと声を上げて笑った彼は、「まあな」と小さくやさしく洩らす。ただ、それだけ。
缶を呷っては、両手で持ってぼうっと遠くを見つめて、また呷って。……本当にそれだけ。
「……おいしかった?」
「まだ残ってるぞ」
「わたしも、まだミルクティーがあるもん」
「口直しに一口とかどうよ」
「遠慮しとく」
じっと見ていることに気付いているのに、彼は座ってからわたしと目を合わそうとしなかった。
ただ、わたしの隣に座っているだけ。……コーヒーを飲みながら。それだけ。本当に……それだけ。
「つ……ツバサく」
まるで、我慢大会でもしているかのような気分だ。
けれど、とうとう耐えられなくなって声をかけようとしたそのとき、パタパタと遠くの方で足音が響いた気がした。もう講堂は出入りできないようになっているはずなのに。まだお客さんが残っていたのだろうか。
「アオイちゃーん! いたら返事してー!」
「……カナデくん?」
「そういえばさっき、葵の居場所聞いてきたっけ」
「え。何で教えてあげないの」
「いや、普通にど忘れしてた」
いやいや、そこは覚えてあげようよ。声を聞く限りかなり必死そうだよ?
「……いやいや、いるなら返事してよ。アオイちゃん」
「あ、ごめんカナデくん。ツバサくんに突っ込み入れててすっかり」
「……ツバサも、アオイちゃん見つけたなら教えてよ」
「悪い。すっかり忘れてた」
あ。なんだかカナデくんがものすごい悲しそうな顔に。慌てて用事を聞いてみた。
「……ここじゃ、ちょっと」
「……そうなの?」
「いや、ツバサが……」
「俺が聞いちゃ不味いこと……って、何するつもりだよお前」
「何もしないよ!? ただ相談を、……あっ」
「「相談??」」



